排他主義の時代

皆さま、こんにちは。
安希@大学院の寮からです。

いよいよオバマ大統領がホワイトハウスを去ります。私は合衆国の市民ではないので、彼がこの8年間に成し遂げたこと、遂げられなかったことについて、細かいところまでは分かりませんし、評価する立場にもありません。ただ、海の向こうの人とは言え、彼のような人がリーダーでいてくれたことは、ありがたいことだったなと個人的には思っています。経済がどうだ、外交がどうだ、という前に、人として最低限持ち合わせていてほしい「寛容さ」を、ずっと体現していたように思うからです。

もちろんこれは、私個人の感想ですから、オバマがとても嫌だったという人だってたくさんいるのだと思います。私がオバマ大統領の存在に漠然とした「安心感」を感じられたのは、もしかしたらとても個人的な理由からで、オバマ大統領が自分と同じ有色人種だったから、かもしれないですし、ミシェル夫人に対するリスペクトのある態度について、女性として心地よさを感じたから、かもしれないですし、あるいは現時点においては、次期大統領がトランプになった反動でオバマという存在のありがたさを今更ながら痛感しているだけかもしれません。ただ、少なくとも彼は、「誰かを見下したり、いじめたり、貶めたり、そういうことをしなさそうな人」だったという気がします。そういう安心感は、株価が高騰することよりも、人が生きる社会にとってはずっと大切なことです。

オバマはこれまでアメリカという共同体のリーダーをやってきて、そのリーダーの役はこれからトランプが引き継ぎます。トランプ次期大統領がどんな政策を打ち出してくるのかは現段階ではわからないですし、経済面では良い政策を打ち出してくる可能性もあるのでしょう。ただ、オバマとトランプ、それぞれの大統領就任までの道のりを見てみると、この二人の間には、決定的な違いがあります。それは、共同体を維持するために、包摂と排除、どちらの方法をとるかという違いです。

オバマは「Yes, We Can」で大統領になった人で、トランプは「あいつらが悪いんだ」で大統領になった人。つまり、違いを超えた結束によって社会を動かしたかった人と、敵を名指しし攻撃することで一部の人々(自分と近い境遇にある人)に結束を訴えている人、の違いです。そして前者は、もうすぐ任期を終えます。

アメリカだけではありません。共同体を維持する方法として、排他主義を採用する傾向が世界中で強まっています。これが一過性の現象なのか、この後、社会の分断や、対立の深まりへと進んでいくのか、さらにはその先に、物理的な戦闘などが待っているのかは、私にはわかりません。ただ、何が起きても驚けない時代に入ったことは確かだと思うので、そのことはきちんと自覚して生きていくつもりです。ブログでは、もうあまりいろいろ語りたくはないのだけど、なかなか、大変な時代だと思います。

ではまた、ごきげんよう。

安希

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8件のコメント

  1. 「ブログでは、いろいろ語りたくはない」
    「旅が退屈になった」
    となれば、(大きな)転換期なのではないでしょうか。
    与えられた人生の時間は有限ですから有効に使ってください。

    1. そうですね。転換期だと思います。
      旅よりも、自分が取り組みたいことは別のところにあります。それがはっきり分かったので、よかったと思っています。
      ブログもそうですね。
      時代の流れには逆行してしまうのですが、できればブログ以外の形で、腰を据えてじっくりと書くなり何なりしたいなと思います。

  2. 中村さんの本を読んだことがキッカケで、イスラム社会に興味を持ちました。
    それは日本で報道されているイスラム社会(そもそも情報がほとんど無い)と、本で書かれているイスラムの人々の優しさに随分とギャップを感じたからです。

    オバマ政権はアラブの春で民主主義を拡めようとしましたが、結果的にはシリア紛争、ヨーロッパへの移民流入に繋がったのではないのかな、と私なりに理解しています。

    が、私はイスラム社会に行ったことがないので、イスラム社会の市民はアメリカがイスラム社会にとってきた政策についてどう感じているのだろう、と思っています。
    (日本にいると、西側諸国側の視点に立ったニュースにどうしてもなってしまうと思っています)

    もし、中村さんなりのイスラム社会側から見た視点をご存知でしたら、お教え下さい。

    ps
    質問内容が政治的なことですので、ご返事頂かなくても止むを得ないとは思っております。

    1. コメントありがとうございます。
      シリアとその周辺国で起きていることについては、私はあまり知識がないのでお答えできないのですが、アラブの春で民主主義を広めようとしたのはオバマ政権ではないです。オバマ政権は、中東問題への介入にはあまり積極的な政権ではありませんでした。オバマ政権が批判を受けるとしたら、むしろイラクから米軍を撤退させたことでISのようなテロ組織を拡大させてしまったことだと思います(だからといって、いつまでも駐留し続けるわけにもいかなかったと思うので、どっちに転んでも最悪の状況だったと思います)。もともと中東に介入してバランスを崩したのはブッシュ政権ですから、オバマ政権はブッシュ政権の尻拭いをやっていただけという気がします。ただ、そのブッシュ政権が始めた戦争というのはイラク戦争のことであって、いずれにせよ、アラブの春からシリア内戦までの流れは、アメリカ主導ではなく、各国の反政府組織(や民衆)によるものだと理解しています。もともと、アラブの春が始まったチュニジアやエジプトの独裁政権は、どちらかというと親米派でしたから、アメリカはそのままの方が良かったんじゃないでしょうか。

      シリアの紛争は泥沼化しました。欧米諸国も介入することになりましたし、シリア内だけにとどまらず、イラクからISも入ってきて、もうめちゃくちゃな状況です。もともとあの地域は、イスラム教と言っても一枚岩ではなくて、いろんな派閥や少数民族がそれはもう複雑に入り混じっていて、誰と誰がどこで対立しているのかを整理するだけでも大変だと思います。だから、私には、シリア周辺で起きていることは、もはや全く分かりません。アメリカに対する感情も、派閥ごとに違うと思います。

      という程度のことしかわかりません・・・。ごめんなさい。

      ただ、こうした大混乱の状況なので、イスラム圏の報道は恐ろしいものばかりに偏ってしまっていますが、それはイスラム圏のごく小さな一部分を切り取ったものであって、あの地域に住んでいる人の大半(もう、ほとんどの人)は、穏やかで、すごく親切な人たちです。というのが、私の見解です。

  3. 有難うございます。
    反政府組織によるものだったんですね。
    勉強になりました。

    報道も一部分を切り取り、偏重報道が目立ちますし、
    「何が事実なんだろう」と思うことが最近多くなりました。

    人には当然思考があり、それに基づく視点があります。
    中村さんの本は、普段気付かない視点を気づかせてくれるため
    読んでいて新たな発見があります。

    ありきたりの言葉で申し訳ないのですが
    引き続きご活躍をお祈りしております。

  4. オバマ大統領が去っていく。寂しい気持ちがぬぐえない理由を考えていました。
    「人として持つべき「寛容さ」を体現し続けた人」という表現に涙があふれました。
    この表現をオバマ大統領に伝えたい。

    ジャーナリズムが内包している過渡期としての問題点もとても納得しました。

    ジャーナリスト?ノンフィクション作家?インタビュアー?ドキュメンタリー作家?
    「旅」を終えて、貴女の次を楽しみにしています。
    新しい、いい時代を模索してほしいです。

  5. 毎回、楽しみに拝見させて頂いている、いちファンです。
    1月18日付け毎日新聞朝刊で、論説委員の中村秀明さんが「オバマ家の8年」という文章中でこの「排他主義の時代」に触れていました。
    http://mainichi.jp/articles/20170118/ddm/003/070/110000c
    ご存知でしたら、すみません。
    思わず嬉しくなり、コメントさせて頂きました。

    1. 毎日新聞の記事、ご報告くださりありがとうございます。
      引用前に、一応先方から連絡は受けていたのですが、まさか、ブログからの引用だと気づく人はいないだろうと思っていたので、驚きました。すごい!(笑)

      ミシェル夫人のくだりが素敵だなぁ、とつくづく。

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