109.サハラ砂漠の深い懐②(シンゲッティ)
待てども待てども…の灼熱の砂漠ライフ第2部。モーリタニア人よ、いい加減にせんカイ!

皆さん、こんばんは。モロッコのマラケシュに来ています。が、まだモーリタニアのレポートを書いている途中の私です。
ショックです。事件です。また、南京虫にやられました!
警戒していたのにやられるなんて、悔しくて悔しくて。くっそ~、憎き南京虫よ~!

膝と腰と手の甲に残された噛み痕が、赤くしこりのようになって腫れております。前回イエメンの惨事で免疫が少しついたのか、以前ほどは痒くないけれど、しこりを押すと痛い!
ヨーロッパを目前にして、モロッコという近代都市国家に来て、ゴールまであと少しですが、再び厳戒態勢、戦闘モード全開の、完全防備で、最後まで気を抜かず旅を続ようと心に誓いました。
南京虫との最後の戦いです!この闘いを制するのは、もちろんわたしくし、バックパッカー安希でございます。どうぞよろしく!

では、「サハラ砂漠の深い懐」第2部です。

■砂漠の中心で「アホ!」と叫ぶ

発熱の砂漠トレッキングを終え、次に計画したことは、アタールへ戻り一泊してから次の目的地チュムという貨物列車の鉄道駅(駅と言うか、ただ砂漠の途中で列車が一時停車する場所)のある小さな街へ行くことでした。
すると宿のお兄さんが言うのです。
「アタールで一泊する必要なんてない。シンゲッティからシュムまでタクシーを乗り継いで一日で十分いける。僕が車の手配をしてあげよう。」と。
う~ん、本当かい・・・?と今度こそ疑いましたが、距離的に考えると可能な気がする。
そこでシンゲッティをできるだけ早く出発して、アタールでは宿泊せず、そのままシュムを目指すことにしました。

朝9時に準備が出来ていた私をよそ目に、相変わらずの「車をとっかえひっかえ、なかなか前へ進まない」メルセデス。
それでもどうにか昼ごろにはアタールにつき、周りの人の言う「3時にシュム行きのタクシーが出る」を信じて、炎天下のバス停でじ~っと待ちました。
暑すぎて、息が苦しいというか、日差しが強すぎて目が開けていられないというか…、なのに周りのおじさんや子供が興味深々に話しかけてくるので、仕方なくジンバブエで習ったムビラ(楽器)なんぞを演奏していよいよ死にかけておりました。

待てども待てども来ないタクシー。3時半になり、私はもう一度おじさん達に確認しました。
「シュム行きのタクシーはいつ来るのじゃ?」と。
すると、おじいさんの一人が、「もうすぐだ」と言って、チケットを売ってくれたので、それを握り締めてまた待ちました。
が、いよいよ列車の時間も迫ってくるし、いつまでも待っているわけにはいかないと思い、もう一度おじさん群衆(昼間からぶらぶらしている30人くらいのおっさん達)に聞きました。
「列車には間に合うのか?」と。
「いや、無理だ。」
「無理?!って、みんなして間に合うって言ってたじゃない!」
「今から出てももう無理だ。それに今日はタクシーは出ない。」
「はぁ?何ですと?今、なんと言いましたと?ふざけとると?」

3時に出ると言うから、炎天下で待っていたのに。今日タクシーが出ると言うから、チケットまで買ったのに。
そこで、2008年、平和主義のわたしくしですが、モーリタニアの段取りの悪すぎる男達に喝を入れさせていただきましたの。
はい、久々に吠えました。30人の男の群れに向かって。
「大体ねえ、タクシーの一台もまともに動かせないモーリタニア人はアホじゃ!」と。
すると男達が数人、反論してきました。
「いや、俺達はアホではない!」
「いや、アホだ!」
「アホじゃない!」
こんなことを言い合っていること自体、アホらしいけれど、炎天下で待ち続けたわたくしが、何も言わずに「あらまあ、今日はタクシーないですか。」と簡単に引き下がったのでは、女が廃ります。モーリタニアのアホも一生アホのままになってしまいます。
したがって、疲れていたけれど、ここは最後の力を振り絞って、もう一度声を張り上げさせていただきましたの。

「アホだ!」
「アホじゃない!」
「アホだ~~~!!!」
「アホじゃな~~~い!!!!」

「明日の朝、9時半に必ずタクシーが出るから、心配するな。」と、説得しようとする男達に、
「アホのモーリタニア人の言葉は、二度と信用しません。」
と、最後の捨て台詞を吐くと、はぁ、疲れました。お腹も空きました。なんだかバカバカしい気持ちになりました。
そこで、チケット代の払い戻しだけ終わらせてから、トボトボと小道を歩いて、ひとまず宿に退散しました。

翌朝、9時にタクシー乗り場に行くと、前日に「アホ」騒ぎをした男達とチケットの販売やら払い戻しでもめたおじいさんが朝のタクシー乗り場に集まっていまいした。
昨日のこともあるし、どうなるかしら…、とは思ったけれど、ここは堂々とおじいさんの方へ歩きながら、大声で挨拶してみました。
「アッサラーマ、アレイクム!(アラビア語の挨拶で、アラーのご加護がありますように、みたいな意味合い)」
するとおじいさんは、「レイクム、アッサラーマ!(あなたにもアラーのご加護がありますように)」
と大きな声で返事をして、こちらに歩み寄ってきました。そしてすぐにチケットを売ると(前日と同じ値段)、私のバックパックを張り切って車の屋根へと乗せてくれました。
前日の喧嘩のしこりも何もなく、万事スムーズに運びました。

私ははっきりと言いました。
「今日こそは、シュムへ行って列車にのるからね、頼んだよ。」
するとおじいさんも大きく頷いて言いました。
「ああ、間違いない。シュムへ行くのさ。もうすぐ出発するからな、ここで待ってろ。」
気持ちのいい朝でした。
そして待つこと2時間半、11時30分に、ついにトラックがシュムへ向けて出発しました。
前日の「アホ騒動」に疲れて、会話は少なかったけれど、一緒にトラックの荷台に乗った他3名の男性と助け合いながら、約3時間後にはシュムに無事到着したのでした。めでたしめでたし。

■ヤブ医者の私

シュムに到着したのはいいけれど、シュムは砂漠の荒野に出来た小さな廃墟の町みたいな場所でした。
線路の鉄レールのくずを組み合わせて梁にしたところへ、ドラム缶を切って集めた鉄板?が貼り付けてあるプレハブ小屋みたいな家が並んでいるだけで、あとは、周辺の砂地や家の中を自由にヤギが行き来しています…、みたいな感じでした。
列車が来る6時までの暑い時間、一緒にトラックで来た人たちと共に、プレハブ小屋?の一つに待機して、ゴザの上で休みました。
で…、朝から何も食べていないわたくしのご飯はどこじゃ?と言ってもレストランなんてあるわけがなく…。生きたヤギならいるけれど、どうしようかしら。

お腹もすいたけれど、和気藹々とおしゃべるするには暑すぎるし、同じトラック(座席の方)で一緒にやって来たほか2名のイスラム教の女性(一人はトドみたいな豪快な感じで、もう一人はヤギみたいな控え気味な感じのおばちゃん)は、なんだか取っ付きにくいし…、ということで、周りを無視してゴロリとゴザに寝転んで目を閉じておりました。
すると、トラックの荷台でも一生懸命に話しかけてきた片言英語のおじさんが、「同じトラックだった若い男が歯が痛くて苦しんでいる。どうにかしてやってほしい。」と、話しかけてきました。
う~ん、困りましたね。
というのも、前日、タクシー乗り場で時間を潰していたときに、頭が痛いと訴えてきたおじいさんにアスピリンをあげたところ、うわさが広まったのか、薬がほしいと言う人が、ちょくちょく出てきてしまったからです。
アフリカではたまにこういうことがあります。マリでは、目薬が流行ってしまったことがありました。みんな暇で、珍しいもの好きで、うわさが広まると、誰もかしこも同じものを欲しがる困ったちゃんのアフリカ人…。

「私は、歯医者ではない。」と言ってみたけれど、
「とても痛がっている。どうにかしてやってくれ。」とみんなに頼まれまして、そこでやヤブ医者安希は、アスピリンを取り出し、2錠飲ませてみることにしました。
まあ、歯が痛いのはどうしようもないです。助けてあげないといけません。
残されたバファリンは残り8錠(4回分)。これは自分の発熱と頭痛用に温存し、私にはあまり効き目の無いアメリカ製のアスピリンを処方して様子を見てみることにしました。

すると、周りにいたおじさんや、トドおばさんが、「アスピリン2錠で、いくら支払えばいいですか?」と聞いてきたのです。
驚きました。自発的に値段を聞いてくるアフリカ人がいるなんて…。もらい得、もらって当たり前文化のアフリカ人のはずなのに…。
「いや、お金なんて要らないよ。」
と、ふてぶてしく言うと、みなさんに大いに感謝されまして、そのまま何所からともなく大皿に盛られた昼食(セネガルのチェブジェンという料理)が出てきて、「さあさあ、一緒に食べてください。まずはあなたが食べてください。」みたいなノリになり、みんなで大皿を囲んで、さあ食べよう(手で食べるのが普通)という段になって、「ほら、旅人さんにはスプーンをお出しして。」とか騒ぎ出し、私は手で食べることに慣れているので、「手で食べるからスプーンはいりません。」と、ふてぶてしく言って食べ始めると、「そうだ、そうこなくっちゃ!手で食べるチェブジェンは特別なんだ!」と感激されました。
そこでわたくしは、堂々と、そして黙々と、タダ飯のチェブジェンを食べ、お茶まで入れてもらってから、再びゴザの上にごろりん。
ヤブ医者になるのも、悪くないなと思いましたね。

モーリタニア人の分け合いの精神に助けられて、列車までの時間、空腹に苦しむこともなく過ごすことができました。
彼らの助けがなければ、あんな荒野の砂漠街で食べ物を探すのは無理だったと思います。

サハラ砂漠の不思議な旅は、まだまだ続きます。残りは第3部にて。

ではまた、ごきげんよう。

安希

Be the first to like.


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。