103.笑う力①(バマコ)
カナダのボランティアさんに出会いました。マラリアと闘った彼女の話しを聞いて私は…。

皆さん、おはようございます。安希@マリ共和国の首都、バマコ!です。
バマコという地名の響きに憧れて、「今、バマコです!」とレポートする日を楽しみに旅を続けてきて、ついにやってきましたバマコ、バマコです!(しつこい)

いつだったか、シリアを旅していたときに、知り合った美容師さんの旅人君が
「俺はやっぱり、アレッポよりは、ダマスカスがいいな~。だって、かっこいいじゃんか、俺、今ダマスカス!ってさ。俺いま、アレッポって、それじゃかっこつかないもん。アレッポももちろん好きだけど。」
な~んて話しておれられましたが、うんうん分かるわ、その気持ち。
旅の動機なんて、そもそもが不純以外の何ものでもないわけで、かっこいい地名に憧れて…なんて真っ当な方だわ。
私はこの後、ヌアクショット(モーリタニア)とカサブランカ(モロッコ)に意味もなく長居しようと思っているの。な~んにもすることがなくてもいいのよ、ただ名前がステキというだけで…。だから今、バマコ。今日で4日目の、今バマコ。(しつこい)

そんな訳で、私はバマコという響きにあこがれ、またバマコまで来れば旅のゴールが見えてくるのかなという区切りの気持ちもあったので、今は、ついにたどり着いたぞという感じですね。旅のゴールが見えてくると、安堵もあるけれど、結局は寂しさの方が強いです。アフリカもあと残り数カ国、メラメラ~っと気合を入れて楽しみたいと思います。
さて、そんなマリで何をしているかと言うと、とてもピュアーに観光をしています。レポートに書くようなことが全然見つからないくらい、とても普通にお金を使って、観光をして、そしてゴールが見えてきたのと同時に、ちょっとしたショッピングも始めました。う~ん、楽しいわぁ。だってずっと我慢してきたんだもの!
これまでに培ってきた情報収集技術と交渉術を駆使して、値下げ記録を更新する勢いで値切りまくって楽しんでいます。ホッホッホ。目標額は最初の言い値の3分の1。
失敗することもあるけれど、毎日交渉ばかりしていると売り手に可能な最安値がどの辺りかとか、どの商品のどの品質だとどのくらいまで落とせるかとか、どういうタイプの売り子が高額の言い値を吹っかけてきて、どのタイプの人が良心的な値段設定をしているのか、などが判ってきます。おもしろ~い!(売り側にとっては迷惑な話です。)

っで、マリレポート。何を書けばよいのかしら…?マリは西アフリカ最大の観光地。欧米からのツアー客を乗せたバスがバンバン往来し、日本からのツアー客や短期旅行者ですらちらほら目撃してしまうほどの観光地なのです。
そして、観光地=観光産業で食べている=外国人が沢山やって来てバンバンお金を落とす場所 であるマリの観光業社会がカネカネ星人たちの巣であることは疑いようのない事実です。

以前一緒に旅をした韓国人旅行者(通称サムソン君)が西アフリカの北側から南下し、私がガーナから北上し、どこかであわよくば再会する予定だったにも関わらず、ついにサムソン君はマリの観光地でカネカネ星人に辟易し、飛行機で韓国へ逃げ帰ってしまったという経緯がありました。
すごいでしょ?マリって。
サムソン君のメールによれば、「マリ人からの金の無心に疲れ果てた僕が、もう帰る決心をして、背中越しに最後に聞いた言葉が『金がないなら、とっととこの国から出て行け~!!!』だった。」と。はぁ…まあ驚きはしないけれど。

2008年の目標に「ハードな交渉はしない平和主義(ショッピングの交渉は遊びなので別物)」を掲げた私は、マリ入国前に一つのルールを決めました。
マリでは、お金を使ってピュアな観光をする。と。マリではお金を使わない観光は難しく、金銭交渉に労力を割くのは面倒なだけで何も得るものがない。普通だったらこんなタイプの国(人が鬱陶しい)は面倒だから観光もせずさっさと通過しているはずだけど、マリはやっぱり見るものが多すぎてそういういうわけにもいかない。民族も集落も衣装も地形も建築も、それらはどうしても見ておきたい私にとっての夢だったので、ここはすっきりお金を払って観光を楽しむことに決めました。

貧乏パッカーなりにそこそこのお金を落とし、プロのガイドまで雇って集落をめぐるトレッキングに出かけました。
さすがプロだけあって、その地域に伝わる神話や歴史などいろいろ説明してもらい、また料金に含まれていた食事は貧乏パッカーを感動させるだけのものがあり(二ヶ月ぶりに鶏肉を食べた!)、圧倒的な魅力をもって迫りくる地形と、そこに広がる土壁の集落は感動的で、ガイドが裏で小銭をばら撒きつつ話をまとめてくれるので、村人も「金を持っている外人」の私に好意的な笑顔を振りまいて写真にも応じてくれて、まあそんなわけで、お金をめぐるいざこざはゼロでトレッキングを終えることができました。

がしかし、一つとても残念だったのが、ガイドのセクハラでした。以前インドの観光地でかなり悪質でしつこいセクハラ地獄に悩まされたことがありましたが、マリも同じですね。沢山の外人が入ってくる場所、お金が絡む場所では、セクハラ問題はとても深刻です。
19ヶ月も女一人旅をしてきた身としてはこの手の問題は何度も経験してきたことで、これまでもあの手この手でかわしつつ、時には暴力や警察にだって訴えて、大ナタもバシバシふるいながら戦ってきたことだったので、今回もガイド選びの際に注意はしたつもりでした…。なのに…、ムカ!

年配でベテランで物腰の落ち着いたガイドを、人からの紹介と電話帳を頼りに探し、3度の面接までおこなって選出した末の出来事でした。アフリカだねぇ、観光地だねぇ、まったく。
砂漠で見上げる満天の星空は味気を失い、お説教から始まった翌朝の朝食は味気なく、トレッキングの最後は減給で締める…、と、子供じみた経験になってがっかり。プロのガイドよ、プロ意識を持って、ガイド業にだけ専念しなさい!!!ムカ!
後で聞いた話では、トレッキングのガイドはほとんど例外なく、外人とあわよくば「寝る」ことを目標にガイド業をしているのだそうです。ムカ!

途上国のポルノ産業、売春産業、現地人と外国人との間に存在する奇妙な関係については、この先のレポートで詳しく書くかもしれません。
「ただのセクハラ」として片付けられないほど、世界はセックスと金を中心に周っていることがはっきりと見えてきました。
これは先進国と途上国の貧富の差、人種差別、金杯主義、病気の拡散、など、様々な問題を内に含んだ問題だと私は考えています。

さて、前置きがダラダラと長くなったのは、何を隠そう本文に書くテーマが特にないからです。なぜなら観光以外に社会観察もしていないし、その観光はセクハラ問題でギクシャクしているし…。
う~ん、何を書こうかな?と考えてみて一つ思い浮かんだことが、現地でボランティアとして働くカナダのNGOスタッフとの出会いです。何年か経ってマリを振り返ったときに、観光のことよりもボランティアさん達と過ごした日々を思い出すのではないか、と思うような面白い出会いでした。

3人のスタッフと私で何をしていたかというと、ズバリ「飲んで」おりました。毎晩。
昼間、私は観光に出かけ、彼女達は仕事なり何なりをこなし、夕方からダラダラ飲む。
特に、3人いたうちの1人との会話が面白かったですね。
彼女は一人だけ僻地の赴任地へ飛ばされて奮闘中のとても頭の切れる女性でした。大勢のスタッフと共に首都で働くほかの2人とは違い、ストレスだって溜るポジションで頑張る彼女。地元人以外の人間と、たまにはビールだって飲みながら悩みを打ち明けたかったのだと思います。「ビールおごるよ。」の言葉に負け続けたおばちゃんは、他の二人がいない夜も、彼女とせっせと飲んで長々とお話をしました。その時の記録です。

話の内容は色々でしたが、特に海外に出て、地元の家族と暮らすことで溜ってくるちょっとしたストレスやいざこざの部分に関して共感できる部分が多かったです。
ホームシックではなく、強い帰国願望があるわけでもなく、けれど避けようのない精神的なアップダウンが一定の周期で襲ってくる、と…。うんうん、解るわその感覚。何でもないことに落ち込んでみたり、何もかもがよく見えたり…。
マリ人家族と暮らす彼女は、いよいよ現地の食事にも飽きてきて、「たまにはスパゲティーやサラダを食べた~い!」症候群にかかってところで近くの大き目の町までやって来て療養していたところ、偶然相部屋だったおばちゃんと意気投合したというのが話しの始まり。

特に暗く落ち込んでいるわけでもなく、淡々とされていましたが、数週間のダウン期があったと話す彼女。まあ、ダウン期は「頑張って回復しよう」なんて考えずにとことん落ち込んでみるほうがいいかもねぇ~、などと冗談半分に話していると、彼女が唇の横に出来たデキモノ触りながら、「マラリアの後がなかなか消えなくってウザイのよぇ。まあコレが消えればほぼ完治だって思えば、このデキモノが毒を全部外へ出してくれているみたいで愛おしくも思うけど。へへへ。」
「マラリア?!マラリアにかかってたの?」
「うん。そう。マラリア1回と食中毒。上からも下からも大放出の激しい食中毒に2回やられちゃった。」
「短期の間にかなり色々経験してるね~。精神的なダウン期というより、それは肉体的なダウンだよ。それで精神がダウンしなかったらあなたは変態だと思う。」
「はっはっは~。そうかもね。まあ肉体と精神は密接な関係にあるから、どっちが先にダウンしたかはわからないけど。案外、精神的なダウンのせいてマラリアが発症してしまったってことも考えられる。」
「確かに、精神面の疲労や緊張で病気になることはあると思う。私は激しい食中毒もマラリアも今のところなくて、旅を始めて最初の一年に、ゆるめの下痢が何ヶ月も続いて、発熱を繰り返していた時期があって、今思うと、あの頃は色々とナーバスになっていたのかなと思う。例えば、汚~いお皿に盛られたハエのたかったご飯を見て、『コレを食べたらお腹壊れるかも』ってビビリながら食べてお腹を壊してたの。でも今は、何も考えずに食べるからお腹も怖がらずに何だって受け入れるようになったみたい。」
「へえ~。確かにそんなものかもしれない。」
「で、マラリアの症状はどうだった?かかった人にも沢山出会ったけど、その人たちの言葉を借りれば『死ぬ必要はないけど、死ぬ可能性があるのがマラリア。そして体のありとあらゆる機能が一斉に壊れて、死ぬ必要がなくても死にたい気持ちになるのがマラリア。』とか言ってたよ。よく生き延びたよ、エライエライ!」
「うん、マラリアは猛烈だった。あれにかかるかどうかは、もう運次第だね。私みたいに赴任後数週間であっさりかかる人もいれば、アキのように何ヶ月も旅をしてもかからない人もいる。普通の風邪ではなくて、かかったらすぐに『来た!マラリアだ~!』って解るのがマラリアの症状だから、もう運命を呪いたい気持ちだったね。」
「マリなんて辺鄙な国に来て、さあって時にマラリアにやられたら落ち込むねぇ~。よく耐えたよ、ホント。」
「そうそう、それでマラリアで下痢と高熱が続いてね、一人で部屋でじ~っとしながら自分の手を眺めてたの。そしたら、あまりに大量の水分を排出して脱水症状になったのかなぁ、指先がもうシワシワに枯れてしまって…。」
指先を見つめながら、笑う彼女と一緒に、おそらく「へなへなのニンジン」みたいになっていたのであろう彼女の脱水した指先を想像して、私は大爆笑をしてしまってから、言いました。
「ごめんごめん。コレ、笑うような話じゃなかったわ。」と。
すると彼女も大爆笑をしながら言いました。
「いや、笑うような話だよ。何も私だって、『ああ~私は死ぬかもしれない…』なんて暗く落ち込んで指先を見つめていたわけではなくて、『あらまあ、哀れな私の指先ちゃんよぉ…。』って指先見つめながら心のどこかで自分の置かれた境遇を笑っていたもの。これ以上惨めなシチュエーションってないんだわ~、って滑稽な気分で一人コメディ状態だったのよ。」

マラリアにかかって、脱水してヘナヘナになっていく指先を一人で見つめていたボランティアさん。その状況を想像して、我々は大爆笑でした。
不謹慎でしょうか?
彼女と話をしながら、今までに経験してきた、たくさんの不謹慎な大爆笑を思い出しました。落ち込んで心配してみても、もうどうにもならないことは沢山あります、だったらもう笑うしかない。脱水した彼女もそんな気分だったのではないでしょうか?

発展途上国を旅すると、不幸で不快で不便で貧乏臭く不衛生で危険で理不尽な環境が沢山あります。一人海外で暮らしたり、バックパッカーをしたり、貧乏人生活を経験すると、日本では想像できないような境遇に数多く遭遇します。
けれど、途上国では人は自殺しません。(正確には、『ほとんど』しません)。海外貧乏生活が長引けば長引くほど、不謹慎な「笑い」が増えてきます。これはどういうことなのでしょうか?

ボランティアさんとの会話の中で、最近私がよく考えるテーマについての話が出たついでに、今回のレポートでは、「笑う力」について書いてみようと思います。
レポートのテーマがどんどん脇にずれています。まあ、いっかぁ。

話は2部へと続く。

安希

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