91.強盗襲撃事件「後編」(ハラレ)
強盗たちよ、そんなに外貨が欲しいのか!来るなら来い、空手キッズが相手する!の大騒動。

強盗襲撃事件に巻き込まれ、宿へ逃げ帰ったバックパッカー4人のお話。後編です。

■事後調査

失ったもの:
宿に戻ってから調べたところ、なくなったのは私の眼鏡(UVカットレンズの軽量型のお気に入り眼鏡。サハラ砂漠で使う予定が…)と、Rちゃんの右目のコンタクトレンズ。
男に引きずり回された時に、衝撃で飛んでいってしまったらしい。
Yさんのバックパックは、犯人と引っ張り合いになって破れました。Rちゃんのバックパックもボロボロに破れました。もう少しでナイロンの紐が千切れて犯人が奪い盗っていくところでした。ものすごい力ですね。
ですが、二人とも中身は無事でした。

そして、無くなったと思っていた私の楽器は、なんとRちゃんが抱きかかえていた!!やった~、無事だった~。
Rちゃんも楽器が無くなったと思ったらしいけれど、それはちゃんと私が抱きかかえていた。したがってお互い助け合って、楽器は無事でした。めでたしめでたし。

怪我:
犯人達が暴力行使をしたのは、後ろを歩いていた女二人だけでした。見た目も一番女性らしいRちゃんをターゲットにして襲ってきた感じはありました。(もともとは襲撃対象外だった、ヤクザおばちゃんの私…。わざわざ男に向かって行って顔面パンチを受けてしまったカッコ悪いおばちゃんの私…。)
私は唇の出血とムチ打ち(?)による二日間の首の痛み、アゴの痛み、頭痛、左手の痺れ。けれど自然治癒しました。
Rちゃんは、アドレナリン全開筋力200%でバックパックを死守し、引きずり回されたことによる両肩の激しい筋肉痛、顔の側面の痛み(ぶたれたの?)、ズボンも破れて膝から出血。けれど自然治癒。

Yさんによれば、「ストップ」と進行方向をふさがれた次の瞬間、白シャツの大男がお腹の辺りから、空のビール瓶を出して脅してきたそうです。
けれど結局そのビール瓶は行使されず、Yさんもバックパック争奪戦には勝ったので、何も盗られることもなく怪我もゼロでした。

R君は指一本も触れられることなく、一番大きなバックパックを持っていたにも関わらず、犯人達からは完全無視でした。
「やるなら俺をやれ!女だけを狙って殴るような卑怯な男は許せん!!」とお怒り。

分析すると:

事件日の前2日間、帰りが遅かったR君とRちゃん夫妻のことを男達はおそらく観察していて、襲撃のチャンスを狙っていたようです。日本人宿泊客が増えると、近辺に犯罪者が増えてくる地域だけあって、狙われていた可能性が高いです。(一人行動の私は、普段は日が沈むずっと前までに帰宿していますが、男性と一緒のこの日は緩んでました。)
普段はあまり物を持ち歩かない私達ですが、この日はメーカーさんのところへ調律に行ったため、全員が楽器を持っていたのも原因の一つです。普段手ぶらのYさんも、この日だけはバックパックに楽器を入れて歩いていたし、Rちゃんもトートバッグを下げていて、私は楽器を小脇に抱えて歩いていました。
犯人にしても、せっかくバックパックを奪ってみたところで、中身はジンバブエの伝統楽器(特に高価なものではない)だけだったので、奪い損ですが、中身を知らなかった犯人たちには、荷物を抱えた4人の日本人は魅力的な獲物とうつったことでしょう。不用意でした。

夜間の外出と所持品の携帯に関しては、大使館でも注意されていたことですが、複数人(4人)で歩いて襲われ、しかも初めから暴力的に襲われたのは想定外でした。
犯罪の凶悪化と、グループ化が進んでいる証拠かもしれません。

■病院

翌朝、警察署へ行って事件を報告し、事件の書類を持って警察指定の病院へ行きました。
しかし、病院の設備はとてもお粗末な上に、私達より重症の患者が沢山いて、自分達の順番直前になって私達は受診をやめました。
待合室の横を、点滴の袋を片手に提げて、苦しそうに歩いていく女性を見たときに、ムチ打ち程度で医者にかからなくてもいいではないか。という気持ちになりました。
普通、点滴は腕よりの高いところにぶら下げられているものだと思いますが、女性は針の付いていないほうの自分の手で袋をどうにか持ったまま、首をかしげて悲痛な顔で歩いていました。

また、病院で診断を受けたところで、回復が早まるとも思えなかったことと、金融機関マヒ状態のジンバブエで医療サービスを受けると、手持ちの米ドルキャッシュが底をつく心配もあって、断念しました。(無事出国するまでは、米ドル命です。)
2日間は苦しみましたが、日本から持っていったバンテリンクリームと療養で無事回復しました。Rちゃんも「サロンパス」がこんなに効くなんて!と感動していました。無事回復です。

■不幸中の幸い

今回の事件は、何一つ盗られることなく、大した傷を負うこともなく、幸運だったと思います。
ハラレの強盗は、武装していたとしてもビール瓶程度のものですが、例えば次に向かう南アフリカのヨハネスブルグや、ケニアのナイロビ、ナイジェリアのレゴスであれば、凶器はもちろん拳銃で、堂々と撃ってくるのが普通です。
したがって、ハラレでの一件は、事件が深刻になる前の、忠告だったように思いますね。4人でいても危険であることは分かったし、それなりに有名な都市へ行くときはやはり警戒レベル5の武装が必要だということもはっきりしました。

この旅が始まってからずっと、「何かに守られている感」があるのですが、携帯の盗難事件と言い、今回の強盗事件と言い、無傷で助かっている強運を感じます。
Rちゃんも同じく、一年数ヶ月の旅の間中ずっと「何かに守られている感」を持って旅をしてきたのだと、事件前から私達はそんな話をしていました。
私達は霊感はまったくないけれど、どうも何かに守られていて、大事に至る前の安全なときに、警告が来る…、と。うん、そうなのです。不思議です。

今回の事件の一番の勝利要因は、Rちゃんの「人間業とは思えぬ叫び声」でした。Rちゃんの旦那さんですら「暗くて見えなかったけど、まさかお前の声だとは思わなかった。アキちゃんが叫んでいるのかと思った。どっから出てきたんだあんな声?」とビビッたくらい。
普段大声を出すことなんて全然無いRちゃん。妖怪の声を出させたのは、たぶんRちゃんを守っている「おじいちゃん」なのだそうです。
また、Rちゃん達夫妻は、事件前2日間も夜間外出していて、もし2人だけの時に5人組に襲われていたら、事態はこの程度では収まらなかったと思います。強運です。「おじいちゃん」からの「気が緩んでいるぞ!」の警告です。

Rちゃんは言いました。「アキちゃんは今回もチーコちゃんの助けがあったんじゃない?」と。はいそのようですね。祖父と時期を共にして他界した愛犬のチーコちゃんが旅の要所で夢に出てきて警告をしていきます。
事件直前にも、Rちゃんと「チーコちゃん」のお告げについて話をしていたところへ今回の「完勝」襲撃事件でした。
メーカーさんを出て一人で街へ帰った後、中華料理店であとの3人と待ち合わせをせずに一人で帰宿していたら…、と考えるとぞっとします。そして、男に顔を二発ぶん殴られて、な~んにもなかったというのもある意味奇跡です。

Rちゃんと私が逆の立場だったら、私には妖怪の声は絶対に出せなかったと思うし、Rちゃんは男に突進なんてせずにオロオロしたまま、私一人だけ男に引きずられていってしまっていたと思います。したがって、状況と配役も味方しました。
今回の「おじいちゃん」と「チーコちゃん」の警告を受けて、私達は、「もう一度気を引き締めて旅をしよう」と誓い合いました。南アフリカで撃たれる前に気がついてよかったです。

見つかったもの:
さらに強運な私達。同じ宿にいる現地人女性が、翌朝6時に我々の部屋のドアを叩き、開けてみると、「道にあなたの眼鏡が落ちていた」と。
あった~!サハラで必要なUV眼鏡!!ありがとう~!
そして、8時過ぎ、事件現場に私が戻ると、眼鏡が見つかったことを知らなかったYさんが、眼鏡探しをしてくれていました。

とりあえず眼鏡は見つかったので、あとはRちゃんの右目のコンタクトレンズのみ。いくららなんでも落ち葉だらけの歩道でコンタクトレンズを発見するのは無理でしょう。もう誰かに踏まれて割れているかもしれないし…。
と話しつつも、落ち葉の間に目をやると、「あ~、あった~!コンタクトレンズが落ちてる!!」ものの数秒で発見してしまいました。しかも無傷です。
したがって、この事件で我々が失ったものは、ゼロ。完勝です。

■対策

事件をみんなで振り返って、ひとつ興味深かったのは、一番大荷物だったR君だけは犯人達から一切無視されていたことです。何故でしょう?
我々の結論では、R君が一番ブルースリーに似ていたから、犯人も怖れて手を出せなかった。と。
長旅のR君の髪は、モサッと伸びて、若かりし日のジャッキーチェンのよう。そしてズボンも裾を巻き上げて、一昔前の中国人風。

アフリカ人でも誰でも知っている映画スターと言えば、圧倒的にジャッキーチェン。そしてアジア人はみんなブルースリーに見えるらしく、街を歩けば、カンフーの真似をする少年達が追いかけてきます。
したがって、アジア人はみんな、カンフーが出来ると思われていて、一目置かれているのです。これは本当の話です。

護身法はいろいろありますが、聞いた話では「カンフーマスター」とプリントされたTシャツを着て歩けば、アフリカ人はみな避けて通るそうです。リストバンドなんかも効果的かと思います。
また、夜間は手製の「ぬんちゃく」を振り回しながら歩けば、一人で歩いても問題ないそうです。これもアジア人ならではの作戦です。

そして、時々、「くっしん」「しんきゃく」運動など、アフリカ人に真似できない「柔軟系」の動きを入れると、群衆は後ずさり。うんうん、その手があったか。
次の旅に出るときには、私は是非剣道着を着て、木刀を腰にさして行きたいと思います。「武道家」のようなコスチュームがいちばん効果的なのだそうです。

また、今回のジャッキーチェン効果を受けて、私達は、さらなる武道系アクション映画の世界浸透に力を入れることに決めました。
「アジア人は、素手でもめちゃめちゃ強いので、手出しは出来ない。」というウソの印象をさらに世界中にばらまいて、犯罪予防に努めたいと思います。

■年末時と貧困

事件から数日たったある午後、私達は街で、別の日本人に会いました。彼は昨年のこの時期にもハラレに来ていたらしく、強盗にも二回襲撃されているそうです。彼曰く、年末時のこの時期はみんなお金が欲しくて焦りがでるので、強盗事件が頻発する。と。
彼が襲われた場所も、私達の事件現場と全く同じ場所。「ハラレは紳士的な街だし、人も親切でやさしいからついつい油断していたら、やられた」と話す彼は、一人で襲われたにも関わらず、決闘に勝利して、金品は盗まれなかったのだそうです。はぁ~、アジア人、強いねぇ。ジンバ人、弱いねぇ。

ジンバブエの物不足はどんどん深刻になり、失業率もまったく回復されず、今年もまた年末時が近づいています。私の1ヶ月あまりの滞在中にも、目に見えて物が無くなっていき、残り僅かになった物資を求めて、連日長蛇の列です。
アイスクリーム屋さんも、アイスを作れなくなり、ハンバーガーやさんに40分並んで買える唯一のメニューがフライドポテト。ピザ屋さんはチーズが無くなって閉店したところもあれば、パイナップルののっていないハワイアンピザのLサイズだけ販売している店もあります。
銀行とスーパーはいつも人人人。インフレの札束を数えるレジのお姉さんは混乱し、とにかく全てに時間がかかり、忍耐の毎日です。

こんな状況下で年末を迎える人たちが、苛立って外人を襲う気持ちも分からなくは無いですね。とにかく米ドルを手に入れない限り、何も出来ないという感じです。
ジンバブエの急激な衰退のなか、それでもプライドを持って持ちこたえてきた人たちの中にも、限界を感じている人も多いと思います。
この後の選挙で政治が好転すれば別ですが、そうでない限り、もうあと半年…、または数ヶ月で、何か大変な事態が発生するような予感がします。

以上、ジンバブエからのレポートでした。
それではまた、ごきげんよう。

安希

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