90.強盗襲撃事件「前編」(ハラレ)
ホテル付近の暗い路上。5人組の男が、うわぁ~襲ってきた~!!

皆さんこんにちは。ハラレ最後のレポートは、不幸にも犯罪の話になってしまいました。
単刀直入に言わせて頂きます。強盗に襲撃されました。

■罠

事件が起きたのは金曜日の午後8時50分ごろ、宿からわずか20メーターほど離れた地点の暗い路上です。
襲われた理由はいろいろありますが、気の緩みが一番の原因です。
たまたま宿に沢山の日本人バックパッカーが宿泊していて、その日も男性二人を含む4人だったということもあり、普段一人で旅をしているときには絶対に起こりえないような間抜けな行動を取ってしまいました。

1.現在の経済崩壊によって、ハラレ市内の治安が悪化していることは周知の事実でした。しかも米ドルを持っている外人、特に現在は白人の旅行者が少ない分、日本人が狙い目というのも当然の話です。
日本人の宿泊者の多い宿付近の5thストリートは、毎月のように誰かが襲われているということも聞いていました。とにかく街灯も何もなくて真っ暗で、襲うには絶好の場所です。

2.宿の周りが危ないことを知っていた私の行動パターンとして、ハラレに行く前は、警戒レベル5(一番高い)の武装態勢を予定していました。
まず、夜間は絶対に出歩かない。これはいつも必ず守ってきた旅の掟でした。次に、カバンを持ち歩かない。金品や所持品を見せると襲われる確率が上がるので、できるだけ手ぶらが基本です。

夜間どうしても出歩かなくてはならないとき、一番の選択はタクシー。次は、同伴者を連れてあるく。次は、武装して、昼間に下見をした場所のみを計画的に歩く。
一人でどうしても歩きぬかなければいけないケースもあるので、そういう場合は経路の治安を細かく調べて下見をし、貴重品は袋に入れてガムテープで内腿に貼り付けるか靴底に入れ(簡単に触られない場所)、ミッキーマウスの絵柄つきの異様な覆面をしてサングラスを掛け、男装して、ナイフを握ったままヤクザ歩き。が基本です。
この歩き方をする限り、夜間であっても、すれ違う人は目を逸らして逃げていきます。

3.ところが、事件が起きていた日は、警戒レベルが1まで落ちていました。
もっとも犯罪が多発しているエリアを夜間に堂々と歩き、カバンを持って、武装もせず歩いていました。襲われて当然と言えば当然です。
ここまで気を緩めてしまった原因は、ハラレ滞在3週間の間にはまってしまった段階を追った一連の罠のようなものでした。

まず、ハラレについたころ宿に10人近い(ほとんどが男性)日本人がいて、夕飯やナイトクラブに誘われ、深夜にもかかわらず、真っ暗な路上を大勢で歩いてしまいました。
最初は、二件隣のホテルのレストランへ行くのでさえ怖がり、10人いても夜道を歩くことを恐れていた私も、回を追うごとに緊張感が溶けていくのだから不思議です。
事件が起きた一週間前の金曜日にも、事件の日と全く同じように街の中華料理店で夕食を取り、男3人、女2人で無事歩いて宿までたどりついています。
こんな風にして、少しづつ人数が減っていき、最初の「カバンを持たない」掟も忘れ、みんなで歩けば怖くない状態に陥っていきました。
一種の罠ですね。徐々に緊張感を失っていき、最後にドカンとやられました。

■事件の日

今振り返ると、ハラレ生活の「忙しさ」もまた罠の一つだったように思います。普段は余裕を持って安全第一で旅をしているのに、毎日朝から多忙で、ついつい夕暮れ時まで用事が長引き、へとへとになってしまう。そして疲れて注意が鈍る悪循環でした。

事件の日は、朝からネット屋さんで最後の航空券探しを何時間もやっていました。いろいろ手を尽くしたけれどなかなか取れない格安エアチケットをついに押さえた夕方、同じ部屋に泊まっていた夫婦のR君とRちゃんと一緒にネット屋を出ました。
その日は実はもう一件用事があり、私達が楽器をオーダーしたメーカーさんのところへ挨拶をしに行く予定でした。
外へ出るともう夕暮れ時。位置的に離れたバス停まで歩き、そこからバスでメーカーさんのところへ行くと、帰りは日が暮れてしまうのではないか…、と初めは行くことを躊躇しました。
しかし、先に行っているもう一人の日本人男性Yさんが、私達が来るのを待っていたりすると、帰り道が一人の彼が危ない。ということで3人で行くことに決めました。

さてバスに乗りメーカーさんのところへ到着した私達。そこで一つ問題が起きました。私のミスですが、ネット屋さんでトイレを使ったときに、トイレの鍵と自分のホテルの鍵を間違えて返却したことに気づいたのです!形もよく似た二つの鍵を間違えました。
これはイカン、と思い、一人で鍵を戻しに帰ることにしました。けれどもう夕暮れ時。街の中心に戻り、鍵を返すところまではいいけれど、そこからまた離れた危険エリアにある宿まで一人で歩いて戻るのは怖いと思いました。
そこで中心街の中華屋さんであとの3人と待ち合わせて、宿へは4人揃ってから戻る約束で一人ネット屋さんに戻りました。

ネット屋さんについたころはまだ少し明るかったけれど、中華料理店で落ち合って食事を終えた頃はもう真っ暗。
けれどちょうど一週間前にも同じように中華を食べて歩いて宿まで歩いて戻っていたし、今回も男性が二人もついているので、まあ大丈夫だろうとナメていました。
そして宿まであと20メーターの暗闇で事件は起こりました。

■襲撃

一週間前と同じ、一番明るくて、5thストリートを通らなくてすむ道を歩き、5thを曲がって最後の20メートルという真っ暗闇に男達はやって来ました。
気が緩んでいた我々は、前に男性二人、そして後ろに私とRちゃんが並んで、お喋りをしながら歩いていました。すると、2列4人組の我々の中に、背後から男がわさわさっと混じりこんできた気配。
左側にいたRちゃんが一瞬男達の存在を言葉にして(何て言ったかは覚えていない)、もう一人後方から来ていた男は明らかにRちゃん狙いという感じで体を寄せてきました。

危険を察知した瞬間、左側を追い抜いていった二人の男のうち、白いシャツの大男が前に立ちはだかり、「ストップ」と言いました。でかい男です。R君とYさんはまるで少年のよう。
けれど一番危険を感じたのはRちゃん近づいてきた紺のジャージの男ですね。ヤバイと思い、前の男はどうでもいいから、左のジャージ男を振り返った瞬間、男がRちゃんのバックパックに背後からつかみかかり、バッグを引きちぎらんばかりに後方へ引きずり始めました。
「ぎゃ~!!!!」と大声で叫ぶRちゃんがどんどん引きづられて行く~!前の男たちもどうやら揉み合いになったみたいだけれど、その瞬間に私が怖れたことは「Rちゃんが連れ去られていく」ということでした。

そこで私はジャージの男に向かってとりあえず突進。男が引っ張っているRちゃんのバックパックとRちゃんを引き離そうと男の腹めがけてダ~イブ!と思ったけれど、バックパックにどうにか手が触れた瞬間男の右パンチが顔面をヒット。
男のパンチをもろに顔面に食らったのは初めてですね。旅をしていると実にさまざまな初体験があります。
アドレナリン全開で痛くはないけれど、頭の芯に響く男のパンチに体ごとのけぞって、上唇の裏側が切れて出血しました。結構冷静に「ああそうだわ、こういう闘いになったら殴られるんだわ。確かにあたりまえだ。」と考えました。
そしてもう一回、ダーイブ!すると男の手がまた飛んできて、今度は左耳の辺りから首にかけて(一瞬のことなのではっきりとは分からない)、ぶたれて「首がゴキッ!」。
痛かったです。さっきのパンチよりも効きました。

その後はもう、揉みくちゃでよく覚えていないけれど、Rちゃんは人間とは思えぬほどの大声で叫び続け、旦那さんのR君が「オイ!!!」と怒鳴りながら駆けつけてきて、Yさんは路上に向かって「ヘルプ!」と叫んでいて、犯人達はどうやら逃げ去ったらしい。
宿や周辺のガードマン達も駆けつけてきて、どうなったのかよく覚えていないけれど、私はRちゃんの落とした大事な楽器(メーカーさんのところで調律してもらったばかり)を抱きかかえ、自分の楽器はどっかへぶっ飛んでなくなってしまって、けれどR君に「もう荷物はいい!何でもいいから逃げるぞ!」と言われてとりあえず宿へ向かいました。
そこで進みかけてYさんに言われた。「あれ、あきちゃん眼鏡してなかったけ。」と。

あっ、と思いました。興奮状態で忘れていたけれど、眼鏡をしていない。たぶん殴られたときにぶっ飛んでどっかへいってしまったらしい。
けれどここは一時退散して、あとで探すことにし、急いで宿へ戻りました。何が起きて、何が取られて、誰がどの程度の怪我をおったのか、よくわからないまま逃げ帰った私達。
宿へ戻ると、Rちゃんの叫び声を聞いてただごとではないと思った宿の宿泊者や管理人がたくさん出てきていました。

強盗襲撃事件です。怖くはなかったけれど、暗闇に黒人が近づいてきても黒くて全然見えないといか、あの状況ならやられて当然という印象でしたね。
とにかく全員無事に歩いて宿まで戻りつくことができたのが幸いです。

襲撃事件。話は後半へ続く。

安希

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