82.おばちゃんは山へ宝石堀に②(バガモヨ)
ブチキレまくるおばちゃんの宝探し続編。アフリカよ、目覚めるんだ!

「おばちゃんは山へ宝堀りに」の続編です。あまりに無計画なビジネスマンに苛立ちつつ眠りに就いた夜の、その翌朝からのお話です。

■男よ、泣くな!

朝、荷物をまとめて朝食に立ち寄ったお茶屋さんで、おばちゃんは宣告しました。
「宝石ビジネスについて、どのくらい真剣に考えているのかは知らないけれど、この2日間行動を共にしてみて、あなたの無計画さというか、いい加減さには失望しました。この調子で一緒に山へ行って鉱物採掘現場を見学したとして、このあと私はどれだけのお金と時間の無駄を覚悟しなくてはいけないのかしら?あなたには申し訳ないと思うけれど、山を見に行くのはキャンセルして、私はここからは行動を別にして、一人でバガモヨへ帰って、自分のやるべきことをさっさと片付けてザンジバル島へ旅立ちます。」
するとビジネスマンは焦り始めた。
「ちょっと待ってくれ。僕も昨日の夜、どうして君を怒らせてしまったのかについてずっと考えていたんだ。おそらくこれはアフリカと日本の文化の違いだと思う。こういう出来事の一つ一つから僕はいろんなことを学んでいるんだ。時間や約束の大切さや、説明することの大切さやそういうことを勉強しているし感謝している。昨晩は神に祈った。君を怒らせたことを神に謝って、僕に外の世界の習慣を学ぶ機会を与えてくれていることに感謝した。」
「あのねえ、よくあなたは、神が全てを解決してくれるとか、神は準備をしたとか、神に謝ったり感謝したりということをよく言うけれど、それはもちろんあなたの自由だけど、ビジネスと国際社会と信仰を混ぜて考えること自体、日本人の私には理解が出来ない。そもそも私は神を信じていないので、神がビジネスの準備をしているとは考えられないわけ。解る?もう少し、現実世界の時間と空間の感覚を持って、物質社会について話をしてくれないと、相談にもならない。」
「なるほど。」
「感心してる場合じゃないよ。」
「君は僕の先生だから。」
「年下の小汚いバックパッカーごときに、感心して情けなくないの?」
「君との出会いは、神が僕に与えたチャンスなんだ。」
「だから神は関係ないって言ってるでしょう!!!」

バカバカしくて朝食が不味くなりました。

「以前、欧米人や日本の観光客はあなた達と話そうとしない忙しい人たちだと言っていたけれど、彼らが話そうとしないのは何故だか解る?彼らはアホではないので、こんな無意味な会話に時間を費やさず、もっとてきぱき現実的に働いてお金を作って人生を楽しんでいるのよ。解る?こんな所へ宝石を見に来るのは私のように時間とお金を無駄使いするアホパッカーだけ。解る?」
「では僕はどうすればいいんだ。君が教えてくれなければ、僕は何もわからないままだ。欧米人が何を考えているのか、僕達のどういうところが悪いのかを、今までに話してくれた人がいただろうか?いない。だから何も改善されずに僕らは取り残されて、アフリカは貧しいんだ。」
…。と言われると確かに、彼の宝石ビジネスの話に時間を割いている自分は、なんと親切なバカなのだろうかと、メラメラしてきますね。
彼は、涙目になり、声を絞り出しておばちゃんに言いました。
「どうか、僕を諦めないでくれ。どうかタンザニアとアフリカを諦めないでくれ。僕は昨日、神に謝った。僕にもう一度だけチャンスをくれ。今日、今から山へ原石を見に行こう。そうすれば僕達がこの五年間にどんなことをしてきて、そしてこれから何が必要なのかきっと君にもわかってもらえるし、相談に乗ってもらえると信じている。だからもう一度チャンスをくれ。」

男よ、泣くな!

おばちゃんは涙に負けて、まあ、こんな山すそのサバンナの僻地まで来てしまったわけだし、山のハイキングを楽しんで原石とやらを見てから帰っても遅くはないか。。。と甘くなり、再び山へ宝探しに行くことになりました。めでたしめでたし。

■おばちゃん、ちゃぶ台をひっくり返す!

さて、山の所有権を持っている彼の仲間(おじさん二人)も加わって、いよいよ我々は山へ。山すそまでミニバスで行き、そこからサバンナの木々の間を抜けて、そこからはひたすら山登り。観光ハイキングではなく、発掘調査隊の登山だったので休憩なし。猛烈な勢いで登りました。
私以外の3人はいつも採掘に来ていて登りなれているからいいけれど、私はねえ、ただのおばちゃんパッカーなのでねえ、そりゃあ息も上がります。水だって飲まずにはやってられんのです。

いよいよ山頂付近に近づいて、現在掘っているという洞穴に到着しました。周辺には確かにキレイな石ころが落ちてる。ガーネットが一番多いのかな?でもガーネットは宝石類では価値ランクが低いはずだけれど、大丈夫かしら??
鉱物の簡単な説明と、採掘の様子、周辺の小石拾い、をして、さて次の採掘現場へ、というところでおばちゃんはストップをかけました。

「採掘現場を見せてもらうのは興味深いけれど、どれだけ見せてもらってももうあとは同じだと思う。なぜならどうやって掘っているかはもう理解できたから。だけどもっと知らなくちゃいけないのは、それぞれの原石の質とか値段とか、その後の加工方法とか、どういうルートで輸出されているのかとか、税金や貿易や海外の市場のことなんだけれど。そういう調査はどうしてるの?」
「…?」3人揃って、ぽか~んとしてますぞ!
「例えば、ケニアの宝石商が安価で買い占めていくと言っていたけれど、どの種類の石を彼らは幾らで買っていって、その後どこへさばいてどれくらい儲けてるのかしら?」
「…。」3人揃って、沈黙してますぞ!

「今の感じから言うと、あなた達のやり方はつまり、『僕達、石掘りをしてます。石が出てきました。見に来てください。石をどうにか売りたいと思います。どうぞよろしく。終わり。』で掘りたての石の塊を出してきて後は他人任せです。それだったらケニアの商人がやって来て、彼らの言い値で買っていっても文句は言えない。そもそもケニアの商人の言い値が石の価値に対して不当だと思う根拠はどこにあるのかしら?石の価値や石売却後の流通過程、値段なんかを調べないで、「彼らは安く買っていく!」と憤慨しても、本当に安く買っていっているのかどうか解らない。もしかしたら彼らも儲かってないのかもしれないし、もともと石に価値がないのかもしれない。」
「そんなはずはない!これはとても価値のある石なんだ。それに僕達は5年間も汗を流して山を切り崩して頑張ってきたのに、ケニアの商人が払う額は僕らの労働に全く見合わない。」
「違うんだってば!あなた達は労働でお金をもらんじゃなくて、ビジネスをして、つまり『何かしら価値ある商品』を売ることでお金を儲けたいんでしょ?汗を流すかどうかは石の価値や石の流通や海外の市場とは何の関係もないじゃんかぁ。」
「…。君は素晴らしい点について言及している。僕達は今までそんな事を考えたことはなかったし、誰も話してはくれなかった。」
「…。」おばちゃん絶句。

「つまり、僕達はこれからどうすればいいんだろうか?せっかく掘り出した石をどうすればいいんだ?」
「自分の頭で考えればいいんじゃない?っていうのは本気の冗談だけど、まず、この泥の付いた汚い原石を洗ってみたら?それからどこで安く加工できるかを調べてみたら?それから商品化することを考えてみたら?それからケニアの闇商人がいやなら、輸出に必要な手続きと税金、たぶん鉱物には特別な税がかかると思うので、そういうことをまず勉強したほうがいいんじゃないの?」
「なるほど~。で、どうやって?」
「知るかい!タンザニアの国内のことぐらい、どうやって調べればいいか頭使いなさい!」

そうなのです。頭をちょっとは使ってもらいたいのです。自発的に行動を起こしてもらいたいのです。彼らが受動態の労働者でいる限りアフリカの産業成長はないのです。そこでおばちゃんは言いました。
「今の世界は、先進国がアフリカやその他の途上国の資源を安く買い占めて加工して、それを商品化してから高額で世界にばら撒いてお金を儲けている構造なの。だからアフリカには資源と安い労働力があっても、加工過程を担える「産業」が乏しい。つまり、あなた達がこれまで「ケニアの商人が安く買いあさっていく」と不満に感じてきたのなら、ならばもっと高く買わせる、つまり付加価値を高める努力をしないと、あなたを含めたタンザニアの鉱物産業界にはお金が落ちてこない。どうすればいいか、それは「買い取っている人たちがその後する作業を出来るだけ自分達でやってから輸出する」つまり自分達で、どうにか加工して、商品化して、自分達の持っている原石を元にして宝石産業を発展させていかないと、絶対に儲からないと思う。」
「なるほど~。」
「だから、感心してる場合じゃないってば。私には、タンザニアのこともビジネスのことも産業発展のことも、全然知識がないんだってば。だから自分で調べて頭使ってちょーだい!それが私のポイント!」
「なるほど…。」
「…。」おばちゃん、疲労。

さて、まずは石の分類からきちんとやってもらおうと思い、仲間のおじさんの家で石のサンプル別けをしました。それから山の所有権利書や、鉱物発掘プロジェクトに関する政府の計画など、書類を見せてもらいました。
ざっと目を通した感じでは、「鉱物について、加工について、貿易について、いろいろ重要なことが書いてあるじゃんかぁ~!!!」
そこでおばちゃんは聞きました。
「この書類、ちゃんと目を通した?宝石ビジネスをしていく上での基本が書いてあると思うんだけど。」
「…、うん、まあ一応は…。」と歯切れ悪く。
「この書類のスワヒリ語版、ないの?」
「ある。あるある。それを一応は読んだけれど…、英語版には何が書いてある?」
「って、スワヒリ語版と同じでしょう。」
「重要な事が書いてあるのかな?」と私の手元の書類を熱心に覗きこむ彼ら。。。。

どうやらこの鉱物発掘プロジェクトは外国人にも開かれているらしいのだけれど、彼らと先進国の人間が同じ書類を手にして、ヨーイドン、で宝石ビジネスを始めたら、そりゃあ彼らは負けるでしょう。だって規約も何も、勉強してな~い!
そこでおばちゃんは言いました。
「私だったら、ケニアの闇商人がどうとか、海外の市場がどうと言う前に、まず、この書類を丁寧に読んで、最低限のルールを理解します。」と。

さて、サンプルと、書類のコピーを持っておじさんの家を後にし、「インターネットも、図書館も、役所もないようなサバンナの山奥に篭っていても時間の無駄。何も始まらない。」ことを理由に、おばちゃんはさっさと帰りの乗り物を探すことにしました。
路上ヒッチハイクです。
するとビジネスマンは言いました。
「今日は僕達に付き合って山へ登ってくれて感謝している。今までに聞いたことの無い話が聞けて、とても有意義な時間が過ごせた。この機会を与えた神に感謝します。それで、これはほんの僅かでいいのだけれど、彼ら(仲間のおじさん2人)にチップを払ってあげてくれないかと思って…。」
「チップ?」
「気持ちほどでいいんだよ。」
「なぜ私が彼らにチップを払わなくてはいけないの?」
「彼らは君と一緒にわざわざ山へ行って、上まで登ったから…。」
「はぁ?」おばちゃんメラメラ、怒る!
もしも目の前にちゃぶ台があったなら、思いっきりひっくり返してますぞ!ふざけるな~!と。

おばちゃん、前夜の宿以来、2度目のブチキレです。
「私がチップを払うと思う?何のために?私は彼らについてきて欲しいと頼んだ覚えはない。彼らは勝手に山まで付いてきて、しかも、本当は言うつもりはなかったれけど、この機会にはっきりと言わせてもらうと、彼らを含む全員分のミニバス代まで何故か私が支払って、それでさらにチップを払うの??はぃ?意味が分からない。そもそも、あなたは私に山を見に来て欲しいと頼み、私はその要望に応えて山へ行き、あなたは私がバスの中で手渡したお金で全員分のミニバス代を支払い、誰一人として私に払い戻すこともなく、バス代のお礼を言うことも無く、当然のごとく知らん振りしたまま、それで登山賃を払えといっているのかい?ふざけるな~!!!」
「…。悪かった。僕はまた君を怒らせてしまった。これもまた文化の違いなんだ。」
「何が文化の違いですか?」
「ここアフリカでは、外人はお金持ちとして現地の人にチップを払うのが文化なんだ。だから僕が君から先進国の文化を学ぶように、君にもアフリカの文化を学んでもらえると思った。僕達はパートナーだ。お互い一緒に学んでいこう。チップのことは悪かった。今日は君の文化に従って、払わないことにしよう。」
「パートナー?」おばちゃんは、もう悲しくなってしまいました。穴があったら入って泣きたいくらい。アフリカよ、しっかりしてくれ~。そしておばちゃんは言いました。
「今さっき、あなたがしたことがどんなに悲しいことか解る?あなたは今、あなた達と私の間に、自分自身の手によってはっきりと境界線を引いたのよ。外人と自分達。お金持ちと低賃金労働者。外人にとって一番都合のいい楽な方法がどんなことか知ってる?小銭をばら撒いておいて、裏でしっかりと資源を搾取してお金を作ること。私が賢いビジネスマンなら、間違いなくあなたのお友達にチップを払うでしょう。先進国ではカスみたいな額のチップとバス代とそれにランチもご馳走して、あなた達はそれだけでもうハッピーで、その後のビジネスも何も忘れてしまうでしょう。そしたら賢いビジネスマンは浮かれるあなた達を軽く利用して、欲しいものをさっさと手に入れて国へ帰ってそこからお金を作るでしょう。心の底で、アフリカ人のアホさを笑いながら、うまく利用したことをほくそ笑みながら。」

アフリカよ、目を覚ませ。そうでないとアフリカは世界の食い物にされる。ってもうされてるじゃないかい。

■究極の愛と忍耐と国際協力

アフリカへ来る前、パキスタンで出会った旅行者の中にアフリカへ行ってきたと言う人が数人いました。
彼らが口をそろえて言っていたことは、「アフリカ人はバカだから。」でした。こういう言い方をすると差別的に聞こえるのでよくないのだけれど、彼らはアフリカへ旅行していろんなものを見て、アフリカに魅了もされた人たちだからこそ言っている言葉です。

「アフリカ人は頭を使わない。彼らは植民地から独立して自分達の力でやっていくんだと意気込んでいたけれど、内容は空回り。というか、支配すること、使われることに慣れきってしまって、自分で考えたり、向上心を持って努力したり、責任を取ったりということがない。どう考えても彼ら自身の損になるようなことを平気でやっておいて、「損するけど、いいの?」という我々外人からの忠告には耳を貸さない。」と。

今回の宝石掘りの旅によって、どういうことが起きているのかが少し分かりました。
例のビジネスマンもそのご家族も、仲良くなった地元の人たちにも、悪い人はいません。面白くて人懐っこい人たちです。だからこそ、アフリカよ、目覚めておくれ~。と叫びたいです。

そして、こんな状況のアフリカへ対する国際協力についてもいろいろと考えました。
私がもし、彼らと一緒にビジネスをやれと言われたら、「めちゃめちゃイヤ!」です。
もしも、彼らと一緒に産業を興し、利益を出せといわれたら、「そんなの無理じゃ!」とサジを投げまくります。
そこで気がつきました。絶対無理そうで、しかもめちゃくちゃイヤだけど、本当にやるべきことと言うのは、つまり彼らと同じ視点にたって、「利益を出す」ことを目標に彼らと向き合い、「彼らに知恵を絞らせまくる」ことなのではなか、と。
つまりそれこそ、必要な協力なのではないだろうか、と。

現実の世界は、「利潤最優先」「拝金主義」で動いています。それが世界の現状で、その中の勝ち組が先進国です。
そこでその先進国が、途上国に協力をしようという段になって、「ほれ、先進国の技術でダムを用意してあげた。先進国から物資を持ってきた。先進国から小学校の先生を派遣した。」とやってみたところで、それはアフリカに「利益を出させる」根本的な力にはならないのではないでしょうか?
それどころか、「先進国が作ってくれる。先進国が持ってきてくれる。先進国が教えてくれる。」の「~してもらう」受動態がますます深刻さをます可能性もあります。

もしもアフリカに本当の国際協力をするなら、「金儲けのために一緒に戦う」のが一番かもしれないですね。
これはもう戦いです。今回そう感じました。もしこのビジネスマンと一緒にビジネスを考え、相談に乗って、調査をして、海外市場に商品を流そうとしたら、もうこれは激戦でしょう。
逆に、どこかから予算が下りてきて、このビジネスマンと仲間にチップを払って、先進国の最新の採掘機械を無償提供するような事なら、楽ちんです。

そんなわけで、今回はおばちゃんのブチキレ宝石採掘の話でした。採掘現場へ行くことで、お金も時間も費やして、声を枯らして口論をして(本当によくしゃべった!喧嘩は一番の英語上達法)、それなりの痛みがありました。この痛み、ビジネスマンのためになってくれるといいですね。
以上、タンザニアレポートでした。

それではまた、ごきげんよう。

追伸:ザンジバル島へは無事たどり着き、もどってきました。白いマスト越しに見上げる銀河は、映画のCGのようでした。けれど木造小型船なので服も濡れてしまって、深夜の船上で風に吹かれて震えるはめに…。するとキャプテンに隣の巨漢のおばさんを勧められました…、「ひっついて寝なさい…」と。人間湯たんぽと言うのでしょうか…、なまぬるいおばさんの肌に抱きしめられて…、なんとも言えない体験でした、が二度と体験したくないタイプの湯たんぽでした。

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