81.おばちゃんは山へ宝石堀りに①(バガモヨ)
一獲千金を夢見てサバンナの山奥へ宝探しに行く!のはずが…。

皆さん、こんばんは。安希@タンザニアの東岸に位地する漁村、バガモヨからのレポートです。
時間によってその色彩を微妙に変化させる美しい海を眺めながら。さっきまでエメラルドグリーンだった一面のインド洋も夕日を浴びて藍く変色してきました。

今夜は、ザンジバルというかつては独立国であったけれども今はタンザニアの一部となっている島へ行きます。漁師さん達と交渉して、深夜出発のダウ船に乗せてもらえることになりました。たぶん、乗せてくれるはず。。。なのでそれまでの時間を利用してレポートです。
レポートが書き終わるのはザンジバル島へ着いてからかな~。エンジンなしの木造小型帆船、旧スタイルですというか、海賊じゃあるまいし…。ちゃんとたどり着くかは不明です。レポートが完成すれば、つまり私が無事に島へ着いて戻ってきた証拠になります。まあ、海も穏やかそうだし、転覆しても泳げばなんとかなるでしょう。
ん?なんとかならないでしょうか?まあいいや。

ところで今回のレポートは、おばちゃんの宝石採掘のお話です。バガモヨの道端で偶然出会ったビジネスマンと話し込んでいるうちに、彼の山へ宝石堀りに行くことになったのが話の始まりです。
が、宝石以上に発見すること「大」の経験となったのでレポートすることにしました。

■おばちゃん、山へ宝石堀りに行く

ある日、おばちゃんはバガモヨという名の漁村でビジネスマンの青年に出会いました。観光業、ツアーガイド、講師を主な仕事にしている男です。付かず離れず、2日ばかりをお喋りに費やしているうちに、ビジネスマンは彼の持ち山に埋蔵された「鉱物」について語り始めました。
「5年ほど前、サバンナの中に購入した山に、いろいろな宝石類、鉱物が埋まっている。現在のところ、出てきた原石はそのままケニアの闇宝石商に流しているが、ケニア人は意地汚くてケチなので、全然儲けにならない。僕の掘っている宝石をどうにか加工して、ケニア以外のもっとリッチな国、例えば日本のマーケットに持っていくことは出来ないだろうか?と思って、思い切って相談してみた。」
「宝石ですかぃ?」おばちゃんは宝石に関しては無知…、の以前に無関心。従ってはっきりと言いました。「おばちゃんに相談しても意味ないんじゃないの?」と。

するとビジネスマンは言いました。
「宝石のことが分からなくてもいいから、海外の市場のことを教えて欲しい。僕や僕の仲間はタンザニアから一歩も出たことがなくて外の世界がどう動いているのか全く分からない。だからケニア人にいいように利用されているんだ。」
おばちゃんは、海外の市場のことも良く分からない。従ってはっきりと言いました。
「おばちゃんに相談しなくても、もっと他のリッチそうな欧米人なんかに相談してみたらどうかしら。観光業やってるなら一杯くるでしょ?欧米人の金持ちやビジネスマンなんかも。ほら、さっきもパックツアーでわんさか来てる人たちと親しげに話してたじゃない。彼らに聞いたほうがいいよ。」
すると青年は言いました。
「欧米人は確かに金持ちで、バガモヨに観光をしに沢山やって来る。けれど彼らはとてもとても忙しい人たちだ。観光以外のことには興味は一切ないし、僕達地元の人間に注意を払うこともない。僕達は彼らにとってはガイド以外の何者でもなく、従って会話はないんだよ。以前一人だけスイス人の男で話をして親しくなった人がいるけれど、それ以外はゼロなんだ。日本からの観光グループも先月案内したけれど一緒だよ。僕らの社会や仕事や生活に興味を持って話をしてくる人は皆無なんだよ。だから僕は昨日君に出会ってからずっと驚いていたんだ。どうしてこの旅行者は僕や僕の仲間(親しくなった地元のお姉ちゃんや子供達)とエンターテイメント性のないタダの日常を一緒に過ごして、社会や生活についての話に何時間もを割いているのだろうか、と。」
まるで暇人のような言われ方のおばちゃんなのです。まあ、その通りかもしれない。

そこでおばちゃんは言いました。
「おばちゃんは貧乏バックパッカーという部類の低階層にいる人間だから、普通に観光する財力がなく、従ってエンターテイメントもへったくれもないわけ。そもそもバガモヨへ来たのは、ダルエスサラームからザンジバル島へ出ている客船の料金が払えないから、漁村から帆船に乗って安くいけないかと思って来ただけなの。だから地元の人と話をして地元物価、地元生活、地元システム、それから現地語を覚えないと、話が前に進まない、船の交渉も何も始まらないからやってるだけなの。分かる?」
すると青年は言いました。
「君の旅行スタイルは、僕はとても素晴らしいと思う。君にはお金はないけれど、時間があるし、地域社会への関心がある。僕がずっと話をしたかった人間はまさにそういうタイプの外国人だ。それに君は、ウガンダで孤児院を訪ねていたと話していたけれど、それはアフリカ社会のことを気に掛けているからできることであって、エンターテイメントだけが目的のバケーションに来ているのなら、そんな所へ行ったりはしない。だから僕は持ち山と国際ビジネスの話をしてみたいと思ったんだ。タンザニアの政治状況だっていつ風向きが変わるか分からない。政府が山を一般に開いたのも最近の話で10年先は分からない。だから今、僕は誰か外から来た人と話をしなければいけないんだよ。アフリカ社会の改善のためだと思って相談に乗って欲しい。」
その相談相手が、「おばちゃん」ではねぇ、話にならんですわねぇ。

すると青年は続けました。
「宝石ビジネスのことがどうなるか、とにかく一度僕の山を見に来て欲しい。3~4日あればいい。山へ入って、採掘現場と原石のサンプルを見せるよ。お願いだから一緒に見に来て欲しい。宿と食事は心配要らない。僕の両親の家や、いつも使っている小学校へ泊まれるから。僕の家族もきっと君の訪問を歓迎すると思うよ。母は小学校の先生で、父はマサイ族出身の医者だ。」
「えっ、お父さん、『族』なの!?」
「そうさ、僕の父はマサイ族だ。今は地域医療組織のヘッドだからマサイの生活とは縁を切って普通の生活をしているけれど、かつての名残で耳には大きな穴が開いているし、僕の親戚は今でもサバンナで牛を追って生活している。」
「そうか~、お父さんは『族』かぁ~。すごいなぁ。」
おばちゃん、宝石のことは良く分からないけれど、マサイのお父さんに興味を引かれ、そしてタンザニアの一般家庭にも興味を引かれ、したがって、山へ宝石堀りに行くことになりました。

■スケジュールは存在するのか?

翌日、11時の待ち合わせ時間に合わせて、ホテルをチェックアウトし、細かい用事を片付け、待ち合わせ場所へ行きました。ところが待っても待ってもビジネスマンはなかなかやってこない。30分ほど遅れて来たかと思うと、ちょっとやり残した用事があるからもう少し待ってくれと言ってどこかへ行ってしまう。
そんなことが数回続いて、約2時間半の遅れが出たところで、それでものんびりと「お茶でも飲んでから行こうか?」と言っているのんきなビジネスマンに、おばちゃんは言いました。
「君は一体、いつになったら出発するのだい?」と。「私は11時の25分前からここへ来て待っているんだけれど、それを何とも思わないのかい?」と。
するとビジネスマンは慌てて、「悪かった。ならば今すぐ出発しよう。」とバス停に向かって歩き始めました。…出ようと思えばいつでも出られるのに、なぜだらだらぶらぶら時間を消費するのかしら…、と。でもこれがアフリカの時間感覚なので仕方がない。ここは気を取り直して元気に出発!

さて、バスを乗り継ぎ、やく3時間ほどで「族」のお父さんの暮らす農村のお家へ到着しました。さすが地域医療のヘッドのお父さんとキャリアのあるお母さんのおうちだけあって、周辺の家の中では明らかに立派。水道も電気も水洗トイレもシャワーもありました。庭の立派な牛2頭からでるミルクや、庭の水道からでる水を、周辺住民がポリタンクを提げて買いに来ます。周りの家も賃貸しているらしい。そうかぇ、彼はちょっとしたおぼっちゃんなのかぁ。
彼の弟さん、それから妹さん二人(そのうち一人は私と同い年)ともすっかり仲良くなって、お家では楽しく快適に過ごさせてもらいました…、が、気になるのがスケジュール。
山へ入る前に、懐中電灯などの準備物を買出しにも行きたいと話していたビジネスマン。けれど、初日は家に着いたらもう夕方で、そのままぶらぶらして買出しもせず終了。

翌日こそは朝から買出し、そのまま山へ、と思いきや、またもだらだら。何故か妹さんに連れられて妹さんのお友達のお家を訪問したり、と一向に宝探しが始まらない。
そこでおばちゃんは彼に言いました。「最初の予定で3~4日あればいいと言っていたけれど、もうすでに二日目の昼になってしまった。買い物もしていないし、何もまだしていない。3日の予定なら明日にはバガモヨへ帰るわけだし、4日ならば明後日にはバガモヨへ帰る。私はザンジバルへ行く予定を先延ばしして3~4日を宝石採掘ビジネスのため空けてきたので、もちろん延長はしない。今のダラダラペースで、本当にこれから山へ行って、明日か明後日にバガモヨへ戻れるのかしら?私は確かに暇な旅人だけれど、暇に過ごす時間と移動の時間とリサーチの時間と体力回復の時間、すべてきっちりとスケジュールして周っているので、『暇時間(地域をぶらぶらしてアタリを待ったり、予定外のアクティビティーや交渉ごとにかける時間)』を軽い気持ちで延長して予定をスライドさせることは絶対にないので、よく覚えておいてください。」

おそらく彼には「スケジュールされた暇時間」などという概念は理解できなかったと思うけれど、彼は慌てて言いました。「確かにそうだ。僕達はちょっとゆっくりし過ぎた。だったらもう今日にでも山に行こうか?」
今日にでも行こうかって…、「いつ山に行くか決めてないの??今日行かなかったら、いつ行くの?」
「僕は今日はのんびりして、明日にでも行くのかなと思ってたんだけど。」
「構わないよ、明日行くのでも。でも明日行くのなら、明日は日帰りで山へ行ってその足でバガモヨへ戻るか、4日目を使うなら明日山へ行って、明後日帰って来て、そのままバガモヨまで戻ることになる。それだけです。いつ山へ行くかはあなた次第です。どれだけの時間を山の見学と採掘に当てたいのか、あなた次第です。日帰りで十分なのか、3日かかるのか、私には現場のことは分からない。」
「よし、分かった。じゃあ今日行こう。グッドアイデアだ!」
「…。」

山行きに必要な物資、どういう場所にどのように宿泊して、何を食べるのか、移動にかかる時間、服装など、詳細をいろいろと「しつこく」質問してみたけれど、物資は全て準備してあり、現地では仲間が迎えに来てそのまま小学校の職員室で眠らせてもらえて、服装も普通でよい、という回答でした。
ちなみに、「じゃあ寝袋とロウソクと蚊帳は?」という質問には、持っていきたければ持って行けば良い…、と。なんじゃそれは。そこで寝袋だけは念のため持っていくことにしました。

さて、彼の話では約四時間の移動で山近くの村へ到着(夕方6時着)の予定でしたが、それが8時になり、9時になり、それでも現地へ着かない…。しかも早朝にパンを2枚食べて以来、何も口にしていない、なぜなら彼の仲間が食事を用意しているので食べ物のことは一切心配するなと言われていたからです。
しかし、お腹が空くと必ず不機嫌になるわたくし、冷たく言わせていただきましたの。
「あと30分以内に食べ物を口にしないと、わたくしの偏頭痛が始まります。悪化しましたら、それはあなたの責任です。その場合は、私は宝石堀りをキャンセルして引き返します。」と。
すると約1時間後、乗っていたトラックが停まり、夕飯になりました。助かった~、だけど現地にはまだ着かない。そもそも、仲間が用意している夕飯というのは何所にあるのでしょうか?ともかく、人を当てにするのはもう止めにして、さっさと屋台で食べました。

それから約1時間30分後の深夜11時半、やっと村に着きました。それで、仲間ですが、迎えに来ているはずがない。小学校、どこにもない。そして、どこの誰とも分からない村のおじさんと話して、その人の家へ泊めてもらうことになったのですが、家の中へ通されて…、おばちゃんショック。
家は土壁の納屋のようなもので、そこにはボロボロのスポンジマットが置いてあり、シーツはない。そしてマットの横には見知らぬ女性が寝ている。電気もなくて薄暗くてよく分からないけれど、汚い家だということはよく分かった!

「小学校に泊まるんじゃなかったの?」
「今夜は小学校へ行くのは無理だ。だからここでもいいかい?」

ここでおばちゃん、キレました。これまでも相当いろんなところで寝起きをし、野宿をし、アクシデントに見舞われ、それでも元気にやってきたけれど、今回はマジギレしてしまいました。
なぜなら、彼の説明不足により「準備」をしてこなかったからです。一番怖れたのはもちろん「南京虫」。あれに耐えるつもりはもうありません。もう一度南京地獄にあって体がボコボコになったら、おそらく精神的な打撃が大きすぎて旅が続けられなくなるでしょう。
もしも彼が、こういうケースを予め説明してくれていたら、私は「マイお家セット一式」を大きいバックパックに詰めて「準備万端」で来ることも出来たのに…。
「お家セット」には南京虫対策ビニールシート、密封式マイベッドカバーと枕カバー、防虫セット一式、蚊帳、蚊取りアース、全てが揃っています。でも今夜は寝袋一枚しか持って来ていないのです!

キレたおばちゃんは暴走し、「朝まであと5~6時間なら、外で寝ます。寝袋は持っているので。」と外へ。
するとビジネスマンは、どうかそんな事は言わないでくれと大慌てになり、ホテルを探し始めました。そしてついに、深夜1時30分、やっとマトモそうな宿を見つけて就寝。

疲れました。あまりの無計画に疲れました。アフリカ的というのでしょうか?相談に乗るにしても、ビジネスをするにしても、国際友情を深めるにしても、なんでもいいけれど、もうちょっと先を見て行動できませんか??相手の予定、都合、状況、を読むことはできませんか??

ベッドに入って、眠りに就く前に思ったことは、「明朝、バガモヨへ引き返そう。」ということでした。お金と運と体力が尽きる前に、一人トラックをヒッチして戻る。それが賢明な選択かなと考えました…、はりきっている彼にはちょっと申し訳ないけれど。

続きは第2話にて。「アフリカよ、いい加減にしてくれ!」と叫びたくなるような、そしてアフリカの成長を妨げているものが何なのかについて、この後深く考えさせられることになりました。

ではまた。ごきげんよう。

安希

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