69.神様のスケジュール②(アルマハ)
貨物船、まだ出発しません。まあこんな時もあるさぁ。のんびり行こうよ。

安希です。アルマハです。ゴキブリの安宿です。
インシャーラ(もしも神様が決断をくだせば)の世界にどっぷり浸されてはや6日。
「神様のスケジュール」の続編です。どうぞ。

■大使も、誰も、知る由もなく

床に寝そべったままカートとダイエットペプシで暇を潰す大使の「ANYTIME(いつだって行ける)」の情報を鵜呑みにするほど我々もバカではなく、従って船着場まで歩いていって貨物船のキャプテンに個人的に当ってみることにしました。
大型船はどうやら翌日出発らしいけれど、ソマリアやエリトリア行きなのでどうにも役に立たない。ビザの状況も両国揃って厳しく、サナアで用意してきたビザがジブチとエチオピアのものしかない我々は、ジブチ行きの木造船一本絞りで待つことになりました。
「ノアの箱舟」にはまだ家畜が乗ったままで、この家畜を下船させて再び貨物を乗せ、準備が整うのはどうやら2日後の夕方。船長さんや、周辺の船乗りさんと話をつけて、とにかく2日間、気温47度、湿度数百パーセントはあろうかという港町にて、町で唯一のボッタクリ宿で多数のゴキブリたちと共に時間を潰す結果となりました。ガックリ。

さて、アルマハの日中ですが、屋外へ出ると顔面から汗が噴出して流れ落ちていくほどの暑さと湿度。従って、毎日水ばかり飲んで(軽く4リットルは飲みますね)ゴキブリホテルで待機。ホテルのエアコンがストップすると、後はベッドのに腰掛て、ひたすら耐えるのみ。
暑いです。暇です。夕暮れ時、少し日差しが弱まった頃にやっと表へ出て、エメラルドグリーンの紅海を前に「魚釣りの真似事(釣れる筈もなく)」なんかをして、そしてご飯を食べて眠る。

さて待ちに待った2日後、バックパックを担いで港へ戻ると、なんと船の準備がまだ出来ていな~い!大使も船長も船員も、相変わらずのん気に「インシャーラ。」
「ひぇ~、ゴキブリホテルで2日間も耐えたのに…。じゃあいつ船は出るのですかぁ~?」
「明日。」
「絶対に明日?」
「インシャーラ(神様が決断を下せば)」
「また~?」

ゴキブリホテルで高い宿泊費をぼられ、いつとも分からない神の決断を待ち続けるのはあまりにも悲しいのです。とにかく暑くて頭が変になりそうです。
そこで我々も考えました。大使やキャプテンの電話番号をもらっておいてアルマハを離れ、もう少し標高が高く快適な町で待機し、毎日電話をかけて出港日と時間を確認する。
「GO」サインがでたら山を一気に下り、夕方の船をキャッチする。うんうん、よしよし。そこで、来た道を2時間ほど戻り、タイズという大きめの町で待機することに決めました。

タイズはホテルも多く、値段交渉もしやすく、比較的冷涼でご飯も美味しく町の感じもなかなか良い。快適なホテルで2日間を過ごし、その間、何度もしつこくアルマハへ電話。
アラビア語しか分からないキャプテンと、片言(本当にわずか)の英語しか分からない大使へ電話するというのは、なかなか骨の折れる作業でした。アラビア語の辞書を片手に、単語を繋いで確認。
ホテルのフロントも英語が分からないため、状況を説明できず、電話を代わってもらうわけにもいかず、最後には、町に乗り出して、英語の分かる現地人をハンティングまでしてしまいました。
片言の英語が分かる現地人5人くらいのうち、一番マトモと思われたアラビア新聞(?)の記者を誘拐しホテルへ連行、キャプテンに再確認の電話をかけてもらうと・・・
「翌日の夕方に船が出る。」と。
「おお~!本当に?」
「ANYTIME!」
「ANYTIME??」
記者さんも頑張ってくれたけれど、結局ANYTIEMかよぉ・・・。とは言え、翌日の夕方に船が出る可能性は十分あったので、翌朝再び大使とキャプテンに確認の電話。すると・・・
「今日の船はない。明日だ。」
「明日?」
「そうだ明日だ。ANYTIME!」
「明日、確実に船は出るの?」
「インシャーラ。」
「また~?インシャーラ??」
お~い、神様よ、いつ決断をくだすのだ~!

さて4泊も船待ちをしていまった我々は、次なる決断に迫られました。

○長期貧乏派小汚いバックパッカーの提案(私の場合):アルマハに戻り、忍耐と根性で船にしがみついていく。つまり、船が出るまで港で野宿かイミグレに居座るくらいの気合でアルマハに張り付いて、次の船に確実に乗り込む。キレイに物事が運ばないときは、体力と我慢で押し切れのススメ。じっと粘って機を待つのです。神に決断を迫るくらいの気迫が必要ではないかと・・・。
○ロジカルな企業戦士派清潔バックパッカーの提案(サムソン君の場合):山をアルマハとは反対の方角へ下り、イエメンで一番大きな港町アデンへ向かい、別の船を探す。アルマハには随時電話で確認し、二つの港町から船を探すことで、船を捕まえる確立を上げる。

私の意見:アデンは遠い。仮にアデンで船がまったく見つからず、アルマハへ引き返すことになった場合、朝連絡を受けてアルマハへ向かって、夕方の船に間に合わない可能性だってある。そして私は早起きが大嫌い。
サムソン君の意見:アデンはイエメンで一番大きな街なので、必ず有力な情報を得られるはずだし、英語も通じる。そしてイエメンで唯一アルコール(ビール)が飲める!
私の意見:じゃあ何?君は結局ビールが飲みたいだけなんじゃないの?

結局サムソン君に説得されて、そのままアデンへ行きました。アデン・・・確かに大きな港町で、英語も通じるけれど、ジブチ行きの船の本数が少なすぎる。
唯一発見した船は、エンジン故障中につき、それこそ「神様が決断を下すまで」は出港不可。まあ、仕方ないですね・・・。サムソン君も予想外の船の無さにガックリしたのか、私を巻き込んだので罪を感じたからか、せっかくアデンまで来たけれど禁酒したまま、夜遅くたどり着いた宿で意気消沈して眠りました。
さて、翌朝。もはや期待もせずアルマハへ電話をかけると、つっついにキャプテンが言いました。「今日、船が出るぞ。」と。
「今日!?何時に出るの?」
「夕方4時だ。」
4時…。

アデンからタイズ経由でアルマハへ戻ったとして、4時の出港にあわせるなら最低でも3時にはアルマハへ入りイミグレへ行かなければ行けません。時間的にちょっと微妙なのです。
「キャプテン、我々は今日、必ずアルマハへ行く。だから5時までは待ってください!」
「おお、いいとも。5時だ。今日、午後5時に出港だ!」
「もう一度言うけれど、例のコリアンとジャパニーズが今日アルマハへ行く。5時に船に乗る。OK?」
「了解した。」
「絶対確実?」
「もちろんだ。」
「インシャーラ じゃなくて?」
「へへへ。今日は、インシャーラではない。」
よ~っしゃ!!!

■もしも神様が決断すれば

朝食、昼食もスキップして、とにかく一番早い乗り物をバンバン乗り継ぎ、バックパックを担いで走る我々。そして3時前にアルマハに戻りました。
あ~、戻ってきたよアルマハだよ~。
さてイミグレへ駆け込むと、大使はやっぱり床に寝そべったままカートとダイエットペプシでして、「おお~、よく戻ってきた」と我々を寝転がったまま歓迎してくれました。どうも。
そして、どうやら今日の出港を受けて、我々が2日前に泊まっていたタイズのホテルへも連絡をくれていたらしい。うんうん、いよいよジブチへいけるのね。嬉しくなってパスポートを取り出し、出国スタンプをお願いすると、大使からストップがかかりまして・・・。
「まあまあ、落ち着いて。ゆっくりしていきなさい。」
「ゆっくりする時間は無いです。5時には船が出ますから。」
「5時ねぇ。はたして船が出るかねぇ。」
「・・・今日の4時か5時にでるはずですが。」
「インシャーラ。」
えぇ~、頼むよ~。もうインシャーラはゴメンだよ~。

大使も船の出発時間は分からないようだったので、我々はイミグレを飛び出し、船着場で船長を探しました。すると船長も、
「今日の夕方か、明日には出るだろう。インシャーラ」
えぇ~、だって今朝はインシャーラじゃないって言ったじゃん!!
荷物の積み込みは明らかに終了しておらず、う~ん、5時はやはり無理そうですね。

結局、6時過ぎまで港で待機し、けれど周りの船員や船長や大使の話では、翌朝10時に変更されたということで、はぃ・・・そうですかぁ・・・。
大使には、明日9時にイミグレへ来てスタンプを押し、10時に船に乗ってジブチへ行きなさい。と言われました。そして最後はお決まりの笑顔で「インシャーラ」

というわけで、ゴキブリ宿に戻り、今夜はアラーにお願いです。「どうか明日の朝10時に決断を下してください!」と。

そんな訳で6日も船を待ち、神様の決断をひたすら待っている私達です。一隻の船に乗るために、これだけ手を尽くし、時間を掛けたことはありません。
もしもサナアでエチオピア行きにフライトチケットを押さえていたら、数分のムダも無く飛行機に乗り込み、今頃はアジスアババでアフリカンライフに浸っていたはずです。
しかしここでバックパッカーが思うのは、「飛ばなくて良かった」ということですね。
待つことで体験した「インシャーラ」のイエメンイスラム文化というか、彼ら流の物事の運び方、理解の仕方、そして何より、のんびりした時間の流れを身を持って体験できましたから。(泣)

以上、退屈なアルマハからでした。私もこれからはイエメンに習って、ますますのんびりと神の決断を待ちたいと思います。レポートが少々遅れても、それは私の怠惰の問題ではなく、神様がまだ決断を下していないからなのですね。
そうです、全ては「インシャーラ」なのですから。

まあまそう焦らずにさぁ、ゆっくり進んでいきましょうよ。ダイエットペプシ飲みながらさぁ。のんびりさぁ。
それではまた、ごきげんよう。

安希

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