63.銃撃戦の最中につき…②(ダマスカス)
ちょっと暇そうなアラブの皆様。仕事がないの?やる気がないの?

銃撃戦の最中につき・・・の後半です。どうぞよろしく。シリアの全体的な印象について、の話の続きです。

■多様性

シリアは、これまでのイスラム国(パキスタンやイラン)に比べれば、人口構成に多様性のある国です。もちろん中心はアラブ系イスラム教徒ですが、それ以外の宗教や民族も混ざり合っていて、保守からリベラルまで色々です。
イスラム教の戒律を重んじて、くるぶしまで伸びる黒いコートにスカーフ、写真を拒絶する女性もいれば、キャミソールにジーパンでタバコを吸っている人もいる。
私はシリア国境を通過する直前に、黒コートとスカーフを身に着けて入国に備えましたが、周りに座っていたローカル市民に、あなたはツーリストなのでドレスコードは気にせず自由にすればいいと言われ、スカーフをやめました。

ちなみに、ローカルのおじさんに誘われて、ダマスカスの城塞で行われていたジャズフェスティバルに二晩参加してみたところ、イスラムスカーフの人は全体(1000人くらい?)のうち、100人もいなかったように思いますね。
誘ってくださったおじさんの息子さん二人がギター演奏者で、一緒に出かけた近所や親戚の皆さんも、みんなラフで西洋的な服装でした。(アラブ系イスラム教徒のリベラル派なのだそうです)
他にも、相当多数の同性愛者との出会いがあったのも、アラブのシリアにおいては驚くべき出来事でしたね。イスラム教では同性愛は禁じられているので社会的には大っぴらではなかったですが、ツーリストの私には、いろいろな秘密をおおっぴらに話してくれましたよ。面白い人たちでした。いっぱいいました。いますね~、いろんな人が~。

オランダ人の意見では、シリアやレバノンのこの辺りは、宗教や民族が多様化して混ざり合ってはいるけれど、異宗教間の交流や特に結婚はほとんどなく、グループ意識も強い。
従って、異宗教、異宗派間に問題が発生すると、紛争に発展する可能性も高い。など。

■アメリカのバックアップと国の発展。

シリアの経済は多少良くなってきてはいるようですが、石油資源などが少ないため、アラブ諸国の中では遅れをとっています。
また、イスラエルと和平合意をしているお隣ヨルダンやエジプトに対し、シリアは対イスラエル、そしてそのバックにいるアメリカとの関係があまりよくないため、経済発展が遅れているらしい。
例えば、シリアよりさらに小さく、資源にも乏しいヨルダンが、イスラエルとの和平合意によってアメリカから得られる莫大な資金援助、といったものがシリアにはないのです。
それに加えて、デモクラシーが遅れ、独裁汚職政治が続いているので、外資系企業の参入が少なくて、市場経済も発展してこない。などなど・・・と話していたのは、アラビア語の語学留学に来ていたドイツ人のルームメートだったかな~。

シリアとイスラエルの仲が悪いのは明らかで、またシリアはアメリカのブラックリストにも入っているらしい。
例えばイスラエルのスタンプがパスポートに押してあると入国できない国の一つがシリアです。イスタンブールでビザ申請をした際に、申請用紙の最後の項目で、「占領されたパレスチナに入国したことがあるか?」と聞かれました。
イスラエルを国として認めていない以上、イスラエルという単語は用紙の上には出てこないのだな~と。なるほど。
そして、当然私の回答は NO。占領されたパレスチナへの入国形跡があるとビザは下りません。
そして、申請費の支払いはユーロでした。米ドルは一切受け付けてもらえず、いつもドル払いの私は、振込先の銀行で面倒な思いをしましたね。こういう細かいところに国家間の微妙な関係が反映されているように思います。

けれど、一点だけ不明なものもありました。パレスチナ人とイラク人のハーフでアメリカ国籍の女性とルームメートになったことがあったのですが、アメリカ人である彼女のビザ代はなんと私の半額くらいで、国境で即発行してもらえたらしい。なっ、なぜ?!日本のパスポートがUSパスポートに負けた・・・

アラビア語のできる彼女が現地新聞を読む限りでは、シリア政府にコントロールされているシリアメディアの、対アメリカバッシング&プロパガンダも物凄い・・・と。
アメリカもアメリカなら、シリアもシリアだ。両国とも反感をあおるような記事ばかりで、本当にうんざりする、と話されていました。はい、そうでしょうねぇ。

■仕事がないのか?やる気がないのか?

さて、最後にアラブ人について少し。
シリアの失業率は高く、何もすることがないまま、ぼんやりと一日を過ごす若者が沢山いると言われています。人口増加に見合うだけの仕事が用意されていない。
アラブイスラム社会では、男性は、お金、家、車など、しっかりとした生活基盤を提供できることを条件に結婚相手を探すらしいのですが、現在、都市部の若者の多くが、それらを全く手に入れられず、結婚できないまま歳を重ねている現状がある、とオランダ人が話していました。
街のいたるところで、ただ表の椅子に座って、何もすることなく時間を潰している若者がいっぱいいる、と。うんうん、確かにみんな暇そうです。

けれど私は、ここで疑問に思いました。「彼らは仕事がないから働いていないの?それともやる気がないから?みんな水タバコ吸いながらぶらぶら一日を過ごしているだけで、営業努力とか、勉強とか、将来設計とか、全然していないように思うんだけど。」
すると、オランダ人はアラブ社会の性質について語り始めました。
彼らの社会には、長期的視野にたって、物事を計画的に改善していくというアイデアが希薄だ。と。特にオランダ人の場合、母国オランダにアラブ系をはじめとする多くの移民や難民を受け入れているため、それぞれの民族がオランダ社会でどのように地位を改善していくかをいつも見ているわけです。

そこで、例えば東アジア系の移民は、熱心な教育と、次世代への資産の継承を重要視しているため、時間の経過と伴に地位が向上し、富を蓄えていく。勤勉で真面目なので、企業も雇いやすい。
けれど、アラブ系は、男のプライドと親戚の結びつきが重んじられるため、オランダ社会ではアラブ系の人材はあまり重宝がられないと。
シリアでもそうですが、親戚一同で、店をで~んと構えたら、あとはその店に従兄弟やら甥っ子やら、男がみんなでぶら下がって、とくに経営拡大を図ることもなく日銭を稼いでみんなで分け合って生きていく。考え方。
貯金をしないし、計画をしないし、金銭面でのプライバシーは全然ない・・・と話すオランダ人、アラブ系家族と縁を切った理由がなんとなく分かる気がします。

欧米や、東アジア系の感覚で、「仕事をする気があるのかい?生活を改善する気があるのかい?もうちょっと真面目に働き、緻密に、計画的に物事が進められないと使えないよ。」と言われてしまうアラブの性質。(イランはペルシャ人のインテリでアラブ系とはまた違います。)
移民を多く受け入れてきた欧米、(特に最近サルコジ氏が大統領に選出されたフランスなど)は、アラブ系やアフリカ系の移民に対し、彼らの民族的性質に対して「自業自得」論を突きつけ始めているのかもしれないですね。
うんうん、経済の発展には、ある程度の教育と、勤勉さが必要なのです。アラブ諸国は、石油が底をついたときに、「アラブ人の経済能力」が問われるかもしれません。

対米関係、石油資源、民族的性質、と、国の発展にはいろいろな要素が絡み合っていて複雑なのだなとシリアにきて改めて考えさせられました。
アラブのおおらかさを日本や欧米が学び、勤勉さや緻密さをアラブ社会がもう少し取り入れていけると、ちょうどいいのかもしれません。
この国の人の良さが壊されないまま、他国との緊張が徐々に解かれていくといいのですが、それはまだまだ難しいようです。お隣イラクもあんな状態ですし・・・。

以上、シリアからでした。

ヨルダンは物価高が予想されるので短期で一気に抜ける予定です。忙しくなりそうです。

それではまた、ごきげんよう。

安希

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