52.キルギスへの長い道のり②(ススト~イルケシュタム)
風呂なし、トイレなしの僻地生活延長編。この機会に大使館の悪しき情報をレポート。

皆さん、こんにちは。まだ国境に足止めの安希です。
「キルギスへの長い道のり②」。
デリーの日本大使館へパキスタンビザ申請に必要なレターを取りに行ったところから話は始まります。
良い話ではありませんので、予めご了承ください。それではどうぞ。

■こんにちはエリートさん

ニューデリーの日本大使館へ行き、窓口へ行くと、いかにも「俺はエリート!」と言わんばかりの身なりの男性が窓の向こうから立ったまま私を見下ろし、質問をしました。
「はい?何ですか?」
パキスタンビザに必要なレターをもらいに来ましたと言うと、「うちは基本的にレターは出さないことにしてるんですよ。」と冷たく一言。
窓口に張り付いて事情を聞こうとすると、「これ、読んでください。」とプリントアウトされた外務省安全情報の束を手渡されました。

なるほど。そうきましたか。
外務省安全情報のホームページは、パキスタン入国の数ヶ月前からネットカフェでチェックし、ページをUSBに落として自分のPCでも常に確認できるようにしていたので内容は知っていました。
ところが実際に私がインドを旅していた頃、印パに関係する列車が二回爆発し、多数の死者がでるという事件が起こりました。
私は、地元で知り合ったインド人や英字新聞でその事件を知ったのですが、ここで問題なのが、その事件のあともホームページが一向に更新されなかったことです。

パキスタンへ行こうと思ってい私はネットカフェに再度立ち寄り、テロの詳細と安全情報を確認しようとしましたが、更新日だけが日々変わるだけでホームページの内容は数ヶ月前と同じまま。
なぜ?という疑問です。そして、ホームページにも載らないようなマイナーな事件だったのかどうかを、他の旅行者や地元人に確認に出かけました。

さて、エリート大使館職員さま に手渡された紙の束も、やっぱり数ヶ月前と同じまま。
そこで「こんな古い情報をよくもまあヌケヌケと出して来られるわねぇ!」と言い返しました。
と言いたいところですが、レターがないと困るので失礼にあたって機嫌を損ねないようにしつつ、「ホームページで確認させていただきましたので。」と静かに紙の束を返却しました。
すると、職員さまは、「パキスタンねぇ、北部も南部も危ないんですよ。ラホールとイスラマバードだけ行くと言うのならレター出してもいいですけど。北部に絶対行かないって約束できますか?」
「はぁ?何言ってるの?北部にかの有名なギルギットやらフンザがあるんでしょ?日本人はじめ、パキスタンへ行く旅行者で北部の山岳地帯へ行かないアホがこの世にいるわけ無いでしょ。常識はずれもほどほどにしてください。」と今度こそ抗議しました。
と言いたいところですが、どうしてもレターが欲しかったので、「はい。お約束させていただきます。北部へはもともと行く予定はございませんので、ラホールとイスラマバードだけを少し見せていただいて、10日ほどでインドへ戻って来ます。」とシオラシク言ってみました。

そんな訳で、お約束の書類にサインまでして、レターをいただくことになしました。
いよいよレターをいただくという段になって、不機嫌な職員さまは、「あなた知ってるんですか?ここのインドとパキの国境ですけど、邦人が何人も死んでるんです。あなたご自分の安全を確保する自信があるんですか?うちは一切責任はとれませんから。」と熱をこめてお話されました。
はぁ?

実際の国境付近の状態は前回のレポート「スカーフの向こう側」の中で書いたとおりです。あの国境で死のうと思ったら大変ですね。かなり計画的に自殺でもしない限りとても死ねません。
もしも職員さまが一度でもあの国境を訪れたことがあるのなら、バックパックを担いで一人でゆっくりと歩いたことがあるのなら、「国境で目にするのは邦人の死体ではなく、穏やかな田園地帯と親切な人々だけ。」ということを理解できると思うのですが…。
そして、「行きません」と約束して堂々と訪れた西部と北部の旅も親切さに次ぐ親切さに守られて危険ゼロのまま終了しました。
公共機関の職員から、地元の人々まで皆さん良い人たちで、パキスタン北部には欧米からの登山客や日本人旅行者も沢山滞在しており、私は野山を歩いて氷河を見たり、杏畑でお花見をしながらのんびりと過ごさせてもらいました。

怪しい空気を感じた唯一の場所を挙げるとすると、「ここだけなら行ってもよい」と職員さまに許可をいただいていた首都イスラマバードですね。
あまり良い出会いがなく、自ずと「夜間の外出は控えたくなる」空気があり、激しい抗議集会の騒音や、どこから来るのかは解らない爆破音が宿にまで聞こえていました。

●職員さまへ
イスラマバードで何かが爆発しているようでしたが大丈夫でしょうか?西部ペシャワールの緑茶、最高でした。街の皆さんも愛嬌たっぷりで面白いです!北部の雪山は絶景です!ミルクティーを飲みながらの~んびりするには最適ですよ。おススメです!

■こんにちは面接官

パキスタン北部で出会った日本人の女性旅行者もデリーの日本大使館の対応にはあきれている様子でした。
レターを出す前に面接をすると言われ、その審査?に落ちかけたらしいのですが、そこで彼女は強気に一言。
「さっきからパキスタンは危険だからレターは出せないの一点張りですけど、そういうご自身はパキスタンを旅されたことがあるんですか?」と。
すると、面接官さまは口ごもり、「ないですけど…。」と歯切れ悪くなり、彼女が「行ったこともないのにどうして危険だと解るのですか?」との質問に答えられず、この時点でなぜか彼女のパスポートの中身をペラペラと見始めた面接官。
彼女がアフリカや中近東各地を周ってきた旅行者だということがやっと判ったらしく、最後は無言のまま席を立ちレターを出してきたのだそうです。

「パキスタンのことを何も知らない人に、突然面接なんてされてもねぇ…。現地の状況が判らなくては適正も不適正も判らないわよね。何を基準に審査してるのか不明だよね。気まぐれ?」
う~ん、その日の嫁さんの機嫌とかでテキトウに判断してるんじゃないかしら。私のときはそもそも面接なんてなかったわねぇ。同じ頃にビザ取ってるのに不思議よね。

●面接官さま
知らないのなら最初から威張らず、「私には分かりかねますが、危険な可能性もありますので、旅行される際は情報収集に力を入れて安全を心がけて行ってきて下さい。我々はあなたの安全を保障しない代わりに責任も取りません。」とはっきりと宣言されてはいかがでしょうか?

■優先順位?

デリーの日本大使館のお話で、もう一つ。
これはとある欧米人の旅行者から聴いた話ですが、彼がインド滞在中に出会った日本人の女性が、インド滞在中に出産をされたそうなのです。おめでとうございます。
赤ちゃんは順調に成長し、母子共に健康に生活していたそうなのですが、あるとき日本のご実家から、お父さまが倒れられたとの連絡が入ったそうなのです。
情報によれば、一刻を争う緊急事態。女性はすぐにでも帰国し、せめて孫との対面を果たさせてあげたいと思い、すぐに日本大使館に飛んで行って、子供のパスポートの手続きをしようとしたらしいのです。
しかし、緊急事態であれ何であれ、パスポート発行(特に子供の場合は長い?)には決められた時間がかかり、すぐの発行はできません。の一点張り。

うんうんなるほど。確かに残念だけれど、「規則は規則だ」と言われれば仕方がない。海外に行く以上は様々な不便を覚悟しなければならないと言うのも理解はできるし、特別処置を出す基準設定が難しいのも解ります。例外が増えてきたらそれも大変ですからね。
「緊急事態なのだから例外があってもいい」と「仕方がない」の両立場とも理解できるところです。
しかし、話はここで終わりません。

女性が焦燥感にかられながらパスポートを待っていたある日、偶然知り合った日本人の旅行者が、聞けば政府要人の遠戚に当る人物ということで、日本にいる「要人」に電話を一本入れてくれたらしい。
そして、その「要人」から「さらに政府の上の人物」へ連絡が行き、その次の瞬間、日本大使館から女性のもとへ即座に連絡が入り「ご帰国の準備が整いましたのですぐに大使館までお越しください。」とのこと。へぇ?
女性が大使館へ駆けつけると、パスポートは用意されていて、大使館が手配したリムジンに乗ってそのまま空港へ行き、即日のフライトで帰国。これがお父さまが亡くなられた二日前のことだったそうです。

●大使館さま
どこに行けば、「政府の要人」と知り合いになれるのか教えていただけませんか?私も是非リムジンで空港へ行ってみたいと思いますので…、どうぞよろしく。
ところで欧米人の旅行者は、「君のところの大使館、大丈夫かい??」と驚いていましたよ。

■旅人は命を守らなければいけない

おそらく、大使館側にも様々な事情と理由があり、上記に挙げたような対応をせざるを得ない理由があるものと思います。
確かにバックパッカーの中には問題を起こす人も多いです。東南アジア旅行中にはとりわけ問題だらけの旅行者にたびたび遭遇しました。(特に麻薬にからむものが多いのではないでしょうか?)
従って、それら旅行者の管理をしなければならない大使館職員の任務の大変さも察することはできます。

けれどここで一つだけポイントを挙げるとすれば、どんな理由があったとしても、命と情報だけは軽視すべきではないということですね。
旅行者の大半は命を張って旅行をしています。旅人は自分の命を守らなければなりません。少なくとも私は、死ぬために旅をしているのではなく、最終的に生きて日本へ帰るという目標を持っています。
つまり、身の安全を確保するために情報を収集し、計画を立てて、慎重に行動するよう努めているわけです。

では身を守るために、どの情報を信じて行動するか?と考えたときに、デリーの大使館の情報はあまりにも信憑性を欠いていると言わざるを得ません。
残念ながら、数ヶ月前から変化のないホームページのプリントアウトより、私は英字新聞や地元人の話(例えば「今回のテロはインドに友好的な態度を取るパキスタン(ムシャラフ政権)政府に対してパキ側のテロリストが起こした事件で、インドを訪問したパキスタン政府の要人が狙われものです。従って、印パ政府間の接触がある時に政府要人が乗るようなVIP車両への乗車は避け、一般車両に乗るほうが事件に巻き込まれる可能性が低い。」とか「カシミール問題に端を発したテロなので、カシミール方面へ向かう列車は避けるほうが良い」など。)
のような具体的な情報を信じることになります。そういう情報が欲しいわけです。

列車が二回も爆発しているのにそのことに一切言及せず、いつも同じ口調で漠然と「危険です。」一点張りの情報では、何が問題で、どこがどう危険なのでどう対処すべきなのかがよくわかりません。
従って、結局は独自ルートで情報を探し、それを信じて行動し、それでも事故に巻き込まれたら、もうそれは日本で地震や交通事故で死ぬのと一緒、つまり運が悪かったととるより仕方ないですね。自己責任と運の悪さです。はい、それで結構です。

大使館は、北部が危なかろうが安全であろうが、イスラマバードが危なかろうが安全であろうが、国境で人が生きようが死のうが、何人死のうが、どういう理由で死のうが、テロであろうが自殺であろうが雪崩事故であろうが、ただ漠然と「パキスタンは危ないんです!いっぱい人が死んでるんですよ!」と言うのでしょう。
私はパキスタンを38日間旅して、大使館からの情報の質の低さと、彼らの流す情報を信じていては、この先の道中において自分の身はとうてい守れない。との認識を強めました。
こういうことが続くと、旅人は大使館の情報を無視し、その他のより新鮮で具体的で、かつ実用性のある情報に頼るようになると思います。
そこで事件が起きれば、それは旅人の自己責任です。
だたし、邦人の安全確保をするはずの大使館側とて、「我々は危険情報を流していたのに旅人がそれを無視した」という言い訳は通用しません。
なぜなら、大使館が流している情報は、旅人が採用するに値するような、邦人の安全を確保できる情報ではなく、事件が起きた際に漠然と「だから警告したのに…、身の安全を省みない勝手な旅人が…、」と責任回避するために用意された言い逃れの手段程度のレベルでしかない情報だからです。

というわけで今回は、いい加減な情報で旅行者を惑わし、旅行者の命をテキトウにさじ加減するデリーの大使館への提言でございました~。
とはいっても結局のところは、頭ごなしに旅行者を見下す職員の横柄な態度にちょっと腹が立ってるだけかも。
これから訪れる大使館に期待です。
(ちなみに、ヤンゴン(ミャンマー)の日本大使館では大変親切かつ丁寧な対応をしていただきました。インドビザ申請に必要なレターを発行してもらっている間、日本の雑誌まで出していただいて・・・嬉しかったです。不安な事があったら、またお世話になりたい大使館です。)

中国ーキルギス国境で足止めされ、本来なら「祝日のために国境を閉鎖とは何事!」と怒り出したいところでしたが、護衛のお兄ちゃんや人民軍の陳さんの丁寧な説明と親切な対応によって、辺鄙な砂漠街で寒風に耐える、体臭よろしくない3日間は、怒りではなく逆に彼らへの感謝のうちに過ぎつつあります。
人間は感情動物ですねぇ。理不尽な物事でも説明の仕方一つで妙に納得できたりするものです。
大使館職員さまよ、人民軍のお兄ちゃんを見習ってくださいよ~!

それではまた、ごきげんよう。

安希

P.Sちなみにイスラマバードの日本大使館の場合はというと…。一ヶ月以上の滞在の場合に在留届けが必要かどうかを確認するため電話をすると、英語しか話せない職員が対応に出ました。
事情を説明すると、判らないのでと次へ回され、同じく英語で同じことを説明し、また判らず次へ回され、英語で3回同じことを説明しましたが、在留届が必要かどうかを知っている職員は結局いませんでした。なんじゃそれは?必要か不必要の二つしかチョイスはないのに…、そんなに難しかった?
ついでに言うと、日本大使館なのだから、日本語が話せる職員が一人くらい電話に出てきても良いと思うのですが…、ダメですの?

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