48.スカーフの向こう側②(ペシャワール)
愛嬌たっぷりのパキの皆さん。謎のイスラム圏って、な~んだ、可愛らしいもんじゃないの。

スカーフの向こう側②です。どうぞよろしくお願い致します。

■4日目:

この日は朝から大学の見学。初日のバスの中で「うちに住む?」と声を掛けてきた女性(ナジア21歳)は、滞在先の7人兄弟の従姉にあたる女性でラホールの有名大学にて経済学を勉強中です。
そんな彼女に誘われて大学に乱入。講義に飛び入り参加できるかどうかを聞くために、ナジアと共に職員室を訪れると、なんと学長が出てきた!ぎょ?!
そして、そのまま学長室へ連れて行かれ、他の教授も交えて懇談会が始まってしまいました~。

お茶とクッキーとサンドウィッチをすすめられ、パキスタン、インド、日本に関していろいろ質問が出ました。
特に、インドに関しては皆さん興味深々。印パ関係はいろいろな問題を抱えているけれど、国民レベルではほとんど交流や訪問の機会がなく、「インドはどんな風だった?」という質問を多く受けました。
う~ん、エロ男が多くて路上トイレが臭かったというのが率直なところだけれど、インドのイメージダウンに繋がることばかり話すわけにもいかないし…、神経を使いましたね。

それにしても、学長の話はつまらなかったですねぇ。パキスタンの一般市民を見下しているというか、ブルジョワぶっているというか、偏見があるというか…なんというか。
彼のポイントは単純で、教養あるものは教養あるものとのみ付き合うべきで、階級の低いものとは接触すべきでない、というもの。
そして教授は不愉快そうに、「さっき君を連れて来た女生徒は誰かね?田舎者か?」と私に質問。
「彼女はあなたの大学の生徒のナジアです。彼女は郊外の素敵なご家庭の人です。」
「郊外か。彼女がどこの者かは知らないが、あなたが日本から来た教養ある人であるのなら、ここパキスタンにおいても高階級の人とお付き合いをしていただきたい。今、どこに滞在しているのかね?」
「ナジアの従兄弟のご家族にお世話になっています。」
「従兄弟がどんな者かは知らんが、そんな場所で不自由をする必要はない。私がきちんとした人を紹介します。」
そして学長は、教授の一人に、「君の家に滞在してもらってはどうかね。」と言い、私は教授の携帯の番号を頂き、あとで連絡するようにと言われました。
う~ん、学長のこの態度、なんだか不愉快です。パキスタンの階級システムの一端を垣間見たような気がしますねぇ。

というわけで、懇談会はそこそこにして学長室を飛び出し、カフェテリアで学生達とお喋りをすることにしました。
パキスタンの学生さん達(女学生のみ)、とっても元気です。好奇心の塊です。物怖じしません。英語力、高いです。ギャグのセンスも相通ずるものがありますよぉ!よ~っしゃ!
ナジアの講義が終わるまで4時間ほどカフェテリアにいましたが、次から次へと生徒がやって来て話し相手になってくれました。

テーマはいろいろでしたが、やっぱり彼らは学生さん、例えば、
「愛について、アキの考えが聞きたいわ。」
「あらまぁ、唐突でビックリしたわ。愛を語らう会になるなんて。」
「そうよ、とっても重要なテーマだと思うの。」
「はあ、まあそうねえ、愛ねえ…、う~ん、愛とは、不都合を受け入れることではないでしょうか。」
「まあ、すごいわ!愛についてそんな見解を披露した人はあなたが初めてだわ!さすがジャパニーズだわ。」
「いや、ちょっと待って、受け入れることだなんて、そんな美しいものではないわね。愛とは、ただの妥協ではないでしょうか。」
「まあ、すごい!あなたは物事をポジティブに考えることが出来る人だわ。」
「妥協のどこがポジティブなのかしら?」
「妥協それ自体ではなくて、愛を現実的に捉え、それについて深く考えるというあなたの姿勢はとてもポジティブよ。」
「あなた、頭いいわねぇ~。ポジティブなのは私ではなくて、あなたの方だと思うの。」
彼女は、「あら、ありがとう。愛について、私について、そんな風に話をしてくれる人に出会えて幸せだわ。」と言って嬉しそうにスナック菓子を分けてくれました。

「ところで、日本の歌を一曲歌ってください。」
「また?!コレは何、カラオケ大会なの?」
「私達は歌がと~っても好きなの。」
まさか、大学のカフェテリアで歌わされるとは…、はぁ、私は一体何に巻き込まれているのでしょうか…。
彼女達は、元気に歌い、携帯を忙しくいじくり、メイクアップにも余念が無く、スナックをぼりぼり食べながらコカコーラを飲み、愛嬌たっぷりの学生さんたちでした。

有名大学で勉強し、教養高く、パキスタン社会の先端レベルにある彼女達の場合は、「いつか行ってみたい国は?」にも必ず返答がありました。
「ロンドン」「アムステルダム」「シドニー」
「だからさっきから言ってるけど、ロンドンもアムステルダムもシドニーも国じゃないってば!」

そして別れ際にみなさんは、
「あなたのこれからの旅の安全と、将来の幸せをアラーにお祈りいたします。」と。
「私も皆さんの幸せをいつも思っています。」と言うと、
許婚と婚約済みであと2年で結婚予定の女学生がこういいました。
「どうかどうか、私が彼と結婚しなくて澄むように祈り続けてね。」
「結婚したくないの?」
「だって彼、デブなんだもん。」
ふむふむ、だからさっき愛は妥協だって言ったのよ…、と思ったけれど、ここは爽やかに締めくくりました。
「はい、それではあなたが彼と結婚しなくて澄むよう、お祈り申し上げます。」
お見合い結婚社会に生きる彼女達、今日も彼女達の「祈り」は続きます。

夕方からは、民族衣装&スカーフでドレスアップしてご近所さんを回り、お披露目会。
行く家庭どこも、子供7~10人の子沢山大家庭で、熱烈に歓迎していただきまいして。。。行く先々でコカコーラが出される…。
イスラム教徒のため、アルコールをほとんど口にしない社会にあって、コカコーラは「もてなし」「宴会」の飲み物として最も流行っているのです。
そにしても、毎回毎回コカコーラばっかり飲めません。もう勘弁して下さい!

■5日目:

ご家族と共に、朝からバザール、美術館をめぐり、夕方からはナジアのお家へ皆で押しかけてパーティーでした。
ナジアの義理のお姉さんが、ブリアーニを作ってくださり、これがまた絶品!
ところで義理のお姉さんの2歳の娘さんが前日に目の手術をしたとのことでしたが、以前は目やにと充血でただれていた目もすっかりよくなって元気そうでした。
親戚同士の付き合いが深いこの社会では、誰かが病気になれば、皆で助け合い治療をするようです。
従兄弟もおばちゃんも遠戚も、みんなで病院へ行って話を聴き、お見舞いをします。

■6日目:

この日は、小中学校のテスト結果発表の日。無事進級できるかどうかが判る日ということで、長女サディア、五男フェイザ-ン、次女マリアにとってはドキドキの日。
生徒700人とその保護者がホールに一同に集められ、まずは校長先生のお話、そして成績優秀者の発表。

私はマリアと一緒に椅子に座って発表会を見学していたのですが、発表の途中で、あら、校長先生と目が合ってしまいました。
私はスカーフも巻いていないし、明らかにイスラム教徒ではないので、目立ってしまいますからね。
すると校長先生はマイクで私に聞きました。
「あなたは、パキスタン人ですか?」
見れば判ると思いますが、「いいえ、違います。」
「中国人ですか?」
「いいえ、違います。」
「どこから来た人ですか?」
「日本です。」
「本日会場にお集まりの皆さん、日本からの訪問者が2列目に座っておられます。盛大な拍手を!」
うぇ~、はずかしい~。けれど、ここはちょっくら立ち上がって、会場の皆さんに手なぞ振ってみましたよぉ!
は~い、みなさん、どうもこんにちは~!

発表会が終わり、閉会のときになって、再び校長先生が英語を話し始めました。
「え~皆さん、これで発表を終了します。従って、閉会のスピーチを、日本からの特別ベストにしていただきましょう。それでは皆さん、盛大な拍手でお迎えください。」
ひえ~、スピーチですカイ!

マリアも嬉しそうにしているし、先生達(多くが若い女性の先生)たちも目を輝かせてこちらを見ているし、ここで照れていては場が白けます!
というわけで、演壇へ駆け上がり、マイクを握り締め、旅行始まって以来初のスピーチでした。
日本とパキスタンの教育制度の違い、パキスタンという国、生徒の印象について意見を求められ…。
はぁ、私は一体何に巻き込まれているのでしょうか。

その後は、校長先生、校長先生の奥様と一緒に記念写真撮影会、続いて先生方との懇談会となり、もうへとへとでございます。

以上、私のホームステイ体験記でした。7日目の朝には、オスマーンが友人にバイクの手配をしてくれて、バス停まで送り届けていただき、本当に親切づくめでした。
ラホールの皆さん、本当にありがとうございました。

■実は今、ペシャワールから書いています。

このレポートをムルタンという街のバスターミナルで書き始めたのですが、実は今もうペシャワールに来ています。
というのも、バスターミナルで一人PCを開いていたら、バス会社の社長さんが出てきて、オフィスへ誘われ、お茶をいただき、そのまま職員休憩所(近所の家)を使わせていただけることになったのです。
イスラム圏では女性一人旅などというのはありえないことなので、皆さんそれはもう厳重に丁重に保護してくださいます。別に危険もなにもないのだけれど。。。

ソファーにお庭に、扇風機つきのお家の中で一人ごろごろしながら夜10時のバスを待ちました。
安全面を考えて門には外から鍵が掛けられていて…、あれれ…よく考えてみると外出できない。。。?
捉えようによっては「監禁かしら?」などと思いつつ…、いえいえ違います、これは保護です。

髭もじゃでイカツイ感じの社長さん、そして従業員の皆さんが、ランチになるとサンドウィッチを届けてくださったり、コーラを差し入れてくださったり。はあ、どうもです。
この光景を日本のメディアが報道したとしたら、「邦人旅行者、パキスタンで監禁!」となるのでしょうか?
「社長さんのお家でお昼ねしてるだけで~す。」なんて言っても信じてもらえないんだろうなぁ。

そして、バスの時間が来ると、社長さんは私を運転席のすぐ後ろへ座らせ、運転手から添乗員、ガードにいたるまで全員に私を紹介し、最後まで見送っていただいて、VIP扱いのバスの旅となりました。
そして夜もまだ明けていない5時、バスが休憩(朝のお祈り)のために停車すると、一人の添乗員がお茶に誘ってくれました。
とりあえず付いていってみると、コンクリートの建物の一室で、皆さんはゴザを敷き、アラーにお祈りをささげておられまして。。。
そしてお祈りが終わった人から円座になり、朝のお茶会になりました。

ターバンを巻き、膝にマシンガンを乗せたおじさんたちは、ニコニコしながらお茶を注いでくれて、クッキーやらパンケーキを勧めてくれました。
私が、「寒い」というしぐさをすると、ターバンの布を私に差し出し、「肩に掛けて暖を取ってください。」と。
「タッ、ターバンをですか?」
「はい、どうぞどうぞ。これは大きくて温かいですよ。是非使ってください。」と。
それにしても、もしもこの瞬間に日本のメディアがやってきたら、「邦人旅行者人質誘拐事件!」とかのテロップがでるのでしょうか?
「おはようございます。みんなで朝のお茶会やってま~す。」
なんて言っても、信じてもらえないんだろうなぁ。

注:マシンガンの護衛が乗っているのは、アフガニスタンのテロリストを警戒するものです。けれど特に緊張感はなくて、形だけという感じでした。
ラオスでも銃を持った護衛が一般バスには同乗していましたし、インドにも銃を肩から提げた護衛、警官はそこらじゅうにいましたので特に驚きはなかったのですが、
ただ、ターバンとマシンガンと笑顔と朝のティーが一緒というのは初めてで、なんだか現実離れした光景が妙におかしくて笑えてきてしまって。。。マシンガンの皆さんもいそいそとお茶なんかを注ぎながら笑っておられましたが…。
愛嬌のある、人の良~いおっちゃんたちでした。

兎にも角にも、荷物の管理から、食事から、次のバスの乗り方から、何から何まで、そこらじゅうにいる市民が助けてくれるので、私のパキスタンライフは、な~んにも考えなくて良いという状態です。
厭味なところや、押し付けがましいところがなく、ただ純粋に声をかけ、助けてくれるパキスタンの人々。
この国の親切さを、どうすれば伝えられるのでしょうか?

■スカーフの向こう側

ほんの10日ほど前まで、パキスタンは謎の国でした。
イスラムの男性社会はとうてい理解の及ばない精神的に遥か遠い世界、そして女性社会はスカーフの内側に隠れ接触が一切断たれたれた未開の区域、とのイメージを勝手に作り上げていました。
そして入国後、めまぐるしい出会いを繰り返し、過密日程を抜けてきてふと心に浮かぶのは、「私がかつて抱いていたパキスタンのイメージは一体どこからやってきたのだろうか?」という疑問です。
そして、その答えも旅を続けていくうちに判明し、また決定的になっていくような気がします。

パキスタンの人々はよく、「世界は私達をテロリストだと思っているからねぇ~」と自虐し、困ったような笑みを浮かべます。
私は、彼らが提供してくれる親密で、誠実な態度と多くの親切に対してよく、「あなたの親切に対して、私は何が提供できますか?」と訊ねます。
すると彼らは、「私達がこうして出会ったということを決して忘れないで下さい。私達もあなたのことを一生忘れません。それでいいのだと思います。」と。
私は彼らのことを一生忘れません。そしてプラスアルファ、自分の目で確認し肌で感じる彼らの世界、彼女達のスカーフの内側を少しずつレポートしていきたいと思っています。

もちろん、パキスタンにはテロリストもいるし(パキスタンだけに限ったことではないけれど)、地元人も警戒する危険区域もあるので、危機管理は常に必要ですが、
「私(一人の旅行者)が無事に旅を終え、パキスタン、さらにはイスラム圏最初の国から好印象をもって国を後にできますように。」という願いは、私だけに限らず私が出会った地元民、そしておそらくはこの国の市民の大半に共通する願いでもあるはずです。
最後まで危険値数0の、この平和な旅と毎日の面白い出会いが続いていくことを祈りつつ!以上、パキスタンからの初レポートでした。

明日は、ペシャワールのお茶屋さんで、社会問題などもう少し踏み込んだお話を聞かせてもらう予定です。
政治腐敗、アフガン難民、そして「僕が以前プロポーズしたひとは、許婚と結婚してしまった。相手の男は彼女の従兄弟だ。パキスタンのお見合い結婚の80%は従兄妹同士です。」「えぇ?!」
という話の続きを明日もすることになったので。。楽しみです。
次回のレポート、乞うご期待!

それではまた、ごきげんよう。

安希

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