47.スカーフの向こう側①(ラホール~バハワルプル)
パキスタン入国。偶然知り合ったご家族と親しくなって、イスラム圏にてホームステー開始です。

みなさん、こんにちは。
安希@パキスタンのバハワルプルという小さな町からペシャワールへ向かうバスの待ち時間にレポートを書いています。

バスターミナルの外は砂誇りで真っ白。そんな街をロバやラクダが荷車を引いて歩いていきます。
バスが来るのは12時間後。外は暑く、歩き回る気にならないのでバス停に隠れているのですが…まあ、ノートPCのバッテリーが切れるまではレポートで暇をつぶすとして。。。

パキスタンに着いてあっという間の一週間が過ぎました。
インド北部の山を出てから、バス数台とバイタク数回を乗り継ぎ、最後は歩いてインドからパキスタンへの国境を越えました。
とてものどかな田園地帯の国境でした。他にツーリストもおらず、両国の警備員の親切な対応と笑顔を独占し、インドからパキスタンへジャガイモを輸出する労働者の一群と一緒にのんびりと国境を越えました。

不思議な光景でしたね。
インド側の青いシャツの男達がジャガイモの入った麻袋を頭に載せてボーダーまで歩き、今度は緑のシャツのパキスタンの男がそれを受け取って頭に載せて運んでいく。
一本の国境線を挟んでの受け渡しです。
トラックでまとめて運べばいいのに~、と思ってしまうところですが、両国とも労働者があまっているのでしょう、政府主導の雇用拡大のおかげでジャガイモの皆さん達は今日もご飯が食べられるわけです。
めでたしめでたし。

そんなわけでジャガイモと一緒に国境を越えて、ついにイスラム圏に入りました。
そこで今回は、特にテーマも何もないのですが、パキスタン入りしてから続いている現地の人々からの温かいもてなしと受け入れを書いてみようと思います。
ただの体験記です。どうぞよろしく。

パキスタンへ行くべきか、行かざるべきか、インドにいる間にかなり悩みました。
情報が少なく、イスラム共和国で、テロリストがいるかもしれない国だからです。
けれど最終的に行くことに決めた決定的な理由は、

●パキスタンへ行ったことの無い人、または全然興味の無い人は「パキスタンは危険な国だから行くな!」と言い、
○パキスタンへ行って来た数少ない旅行者、またはパキスタンにとても興味を持っている人は軒並み「め~っちゃくちゃいい国だ!」「世界一美しい国だ!」と言っていたからです。
さて、どちらの意見を信じるか…。私の答えはクリアーで、つまりパキスタンへ行くことにしました。

騙しあいの踏んだり蹴ったりだったインドを抜けて(親切な人ももちろんいましたが)、パキスタンでまず出会った人々は、親切で穏やかで信頼の出来る人々です。
不思議です。国境を一つまたいだだけで空気がガラッと変わってしまったのです。
人々の服装に始まり、公共機関の全て、立ち振る舞いから信念まで、全てが、「ああ、イスラム教の国だ~」と思わせる確かな変化がありました。
そして明らかに、「明るく」なったのです。人々の雰囲気が、あたり全体の空気が、カラッと晴れました。何なのでしょうかこれは?!

■先ず、国境付近の古本屋のおじさんとお兄さん。

お昼過ぎに国境を抜け、夕方の名物行事「閉境式」まで時間を持て余していた私は、国境付近の炉端本屋さんに行きました。
そこで出会ったムスリムのおじさんと息子さんが、とても落ち着いた親切な人だったのです。
まず、パキスタンに関する古本を安く譲ってくれて、旅行に関する沢山のアドバイスをくれました。

「まあまあ、お茶でも飲んでゆっくりしていってください。」
と言われて、お茶と椅子を出してもらい、夕方5時半の「閉境式」までいろんな話を聞かせてもらい、閉境式の間はバックパックを預かってもらいました。
このあたりの感覚を言葉で説明するのはとても難しいけれど、バックパックを預けても全く心配いらない、信頼できる人だということはすぐに判りましたよ。
とにかく彼らは「落ち着いている」のです。

■女性専用席のガールズ

インドとパキスタンの陸路国境はここ一つだけということで、この「アタリ~ワガ国境」では毎夕恒例の閉境式が盛大に行われます。
とにかく両サイドとも観客が数千人?くらいやって来て、両サイドの軍隊の閉境式を見守るわけです。
要はお祭りです。人々は踊り、歌い、自軍に声援を送り、大騒ぎ!
パキスタンサイドにいた私は、イスラム圏らしく男女がきっぱり分けられた客先の女性席に座りました。
するとイスラムのスカーフと民族衣装(ガウンなど)で着飾った若者たちに取り囲まれ、彼女達とすっかり仲良くなってしまったのです。

イスラムのスカーフを巻いた女性って、もうちょっと保守的かと思っていたら、まあびっくり。
ただのノリノリのお姉ちゃんたちではありませんの!

みんな好奇心旺盛で、すぐに話しかけてきて、自己紹介、記念撮影に始まり、チョコレートケーキにスナックにガムが次々に回ってきて、音楽が始まるともうイケイケ!
総立ちでスカーフを振り回し、踊るわ歌うわ。なんじゃこれは?
別れ際には、プレゼントやらEメールアドレスやらをいただいて…、握手に投げキッスに…、何者じゃ彼女達は?
「今日私達がこうして出会ったということを絶対にわすれないでね。」と念を押され、何度も何度も握手。
パキスタンのお姉ちゃん達よ、忘れようにも、あなたたちのインパクトが強すぎて忘れられませぬ。

■バスでニコニコ大合戦

閉境式を見終わり、私はラホールへ向かうバスに乗り込みました。
パキスタンのバスは、男女の席が鉄の扉と網で完全に分かれているので、私はバス前部の女性専用席に悠々と座らせてもらいました。
するとまたもや、スカーフのイスラム女性達がいっせいにこちらを見て微笑んでいるのです。
ある人は花柄のスカーフを巻いて、ある人は真っ黒のスカーフ&ガウンで全身を覆い、目の部分だけしか見えないけれどこっちを向いて微笑んでいるのは判る。
よーっしゃ、こうなったらニコニコ合戦じゃ!と心に決めて、とにかくバスに乗っている間中(1時間くらい)、こっちもずーっと微笑み返してみました。
その間に、みなさんと握手を交わし、少ないけれど言葉を交わし、あとはニヤニヤ~ニヤニヤ~っと。

すると、真っ黒のスカーフで目しか見えない女性が、私の滞在先を訊ねてきたのですね。
とりあえずホテルに行きますと言うと、ちょっとテレながら女性は「うちに住んで(Live)はどうですか?」と聞き、近くの年配の女性に、「ね、いいでしょ?」と同意を求め、彼らは嬉しそうに頷きました。
「住む?」ってなんですの??とは思ったけれど、なんだか周りの皆さんも、「是非是非『住んで』いって下さい」という感じだったので、笑顔に押されて「はい」と言ってしまいました。
初対面で「うちに住んでいって下さい」と誘われたのは人生初体験でございます。
でもまあいいか、住んでみましょう!

バスを降り、そのままご家族(バスの乗客の7人がなんと一族のみなさんだった!)と一緒にバイタクを借り切って、そのまま郊外のお家へ爆走。
まさかパキスタン最初の都市ラホールでホームステーになるとは。。。でもまあいいか。
男5人、女2人、そしてご両親の大家族のお宅におじゃまです。

ホームステー開始後はとにかくハードスケジュールでした。
以下、安希のスケジュールの概要です。

■2日目:

朝起きて朝食を終えたあと、まずご近所の縫い子さん宅を訪問。
イスラム教(マレーシアはちょっと特殊なので除くとして)では一般的に、女性が外で仕事をすることはありません。オフィスにお勤めするような人はほとんどいないわけです。
そこで女性の仕事はと言うと、まずは家事。そして内職、つまり民族衣装を一つ一つオーダーメードで作るわけですね。
布選び、デザイン、刺繍、すべて一から作ります。ミシンと針で!近所の子供たちの「次はこんな刺繍がいい~」なんて要望を聞き入れながら、全て手作業で仕上げていきます。

さて、一件保守的に見える社会で生きる女性達。屋内にこもってひっそりと暮らしているかといえば、そんなのウソ!!
外では全身を覆い隠し、肌の露出を一切控えている皆さんも、家の中では堂々とした権力者です。
ご近所の女性達は小さな仕事場にドカーっと座り、スカーフもなしで、股も広げ放題!
「ちょとお、お父ちゃん、ペプシ買ってきてよ~!」
と買ってきてもらったペプシをガバガバ飲みながら、美しく着飾った結婚式の時の写真なんぞを見せてくださり、
「結婚式のときの写真なんて、化粧つけすぎで誰だか判んないわよぉ~、わ~はっはっは~!!」
のノリでございました。気さくで元気が良くて、素晴らしい皆様です。

午後一番の行事は動物園。
末っ子のマリア(12歳のめちゃめちゃかわいい女の子)の手を引いて、3番目のお兄ちゃんオスマーン(21歳)に動物園へ連れて行ってもらったのです。
バイタク、バス、動物園、昼ごはん、全てオスマーンが仕切り、運賃から入場料の支払いも全てオスマーン。
なぜかと言うと、ここパキスタンでは女性がチケットカウンターに並んだりはしないのです(インドも同じ)。全て男の仕事らしい。。。しかも私はゲストなので一切手出しは無用、と言われまして。。

つまり私はマリアの手を引いて女性専用車両に座ていればよいだけ。
そうしていれば、男性席のオスマーンが鉄格子の隙間から女性専用席を指さし、
「あそこに座っている、かわいこちゃんと、日本人のおばちゃんが僕の連れです。」と運賃係に説明して支払っておいてくれるので、誰も集金にやってこない。
イスラム社会では、婚前の女性は保護者と同伴、結婚後は基本的に夫同伴で移動するのが普通です。

ところでさすがイスラム圏。豚は不浄の生き物として生活の中から排除されているため、逆に動物園でしかお目にかかれないめずらしい生き物らしい。
あっ、いました、泥まみれの豚たちが!
檻の中の豚たちを人々は驚きの眼差しで見つめています!
マリアも豚を見つけると、「うわぁ、ブタ!ブタ!」と大騒ぎでした。

午後の行事二つ目は、次男ジーシャン(25歳)と彼のお友達二人と合流し、バイクに分乗して市内観光。
モスクや古城の見学に始まり、パキスタンの名物を食べ歩くツアーです。
我々の歩く先々で、ラホール市民の皆様の温かい歓迎を受けました。
外人に対するもの珍しさか、何かの勘違いか、家族連れにはよく記念写真を頼まれましたね。
「うちの娘を抱いて写真をとって下さい。」とか、「僕達の写真に一緒に入ってください。」というのがほとんどで、皆さんご丁寧にお礼を述べられ、笑顔で握手をして去っていかれました。

道で人に会えば、老若男女を問わず90%以上の人が微笑んでくれます。そしてもう少し好奇心のある人は、必ず握手を求めてきます。
徐々に分かってきたのですが、「握手」はパキスタンの重要な挨拶のようです。
バスでも、ご近所でも、お店でも、先ずはみんな周りの人たちと握手を交わし、そして去り際にも握手をする。これが文化なのだと思います。
とりあえず求められるままに握手をしているだけで、なんだかすぐに打ち解けてリラックス出来る国、不思議な安心感と人の輪を提供できる民族だな~と。

帰りはジーシャンの親友の勤め先のカバン工場を見学に行きました。パキスタンの旅行カバン、スポーツバック、スクールバッグの9割はこの会社が作っているらしい。
エプロン姿の男性達がミシンの前に座り、この日はクリケットのナショナルチームが使うスポーツバッグを縫っているとのこと。
ミシンの前の皆さん、カメラを回しても写真を撮っても、ニコニコ~。
ナショナルチームのカバンを是非とも一つ記念に持ち帰ってくださいと言われましたが、それは丁重にお断りしました。まあ~使うことはないでしょうからねぇ。

さてこの後は、お母さんご自慢のブリアーニ(肉の炊き込みご飯)を食べるために、排気ガスと砂嵐に曇る高速をぶっ飛ばして帰宅。(バイクだったので顔面と鼻の穴が真っ黒。)
ママのブリアーニ、絶品です!レシピをもらって日本に持ち帰りたいと思います!乞うご期待!

■3日目:

まず午前中は、マリアの手を引いて、四男カムラーンと一緒に近所の散策。その後、三男オスマーンの親友の家を訪ね、ご家族と面会。
イスラム圏では男の絆がとても強く、兄弟達には必ず「ベストフレンド」がいるのですが、その友情の深さにはちょっと驚き。
例えばパキスタンでは、口ひげを生やした体格のいい男達が手をつないで道を歩くのは当然の習慣です。
そしてオスマーンの友人宅では、ソファーに並んで座った彼らが妙にいちゃいちゃいちゃいちゃ。
髪を触りあったり、ほっぺたを撫であったり。。。あらまあ。。。
でもそれが彼らの友情表現なので、特別な意味はないのだそうです。あらあら。。。

午後は次男ジーシャンが教えている個人塾を見学。塾ももちろん男女は別れて勉強します。私は女性の講座を見学しました。
試験前で猛勉強中のはずの女性達はスカーフを被り、ゴザの上に座って熱心に試験準備中…、と思いきや、私のところへ次から次へとノートやら紙がまわってくるのです。?
「日本語のアルファベットを全部書いてください。」「サインください。」「私の名前を日本語で書いてください。」などなど。
そして、しだいにお勉強会は座談会になり、「結婚は?」「宗教は?」「将来の夢は?」「行ってみたい国は?」のお話になり、
ついに、記念写真撮影会になり、最後は、「日本語の歌を歌ってください。」
「歌?」
「はい、日本の歌を一曲!」
「皆さんのほうこそパキスタンの歌を歌ってください!」
すると、スカーフの女性達は大声で大合唱を始めたのです。パキスタンの国民歌を!
「ダッ、ダッ、パーキスターン、ジャ、ジャ、パーキスターン!」とパーキスターンを繰り返す歌です。
皆さん、歌唱力抜群です。だけど試験準備はしなくていいの??

ところで、「将来の夢は?」への回答は、ほぼ全員が「先生」でした。
内職以外で女性が活躍できる唯一の職種が教員、または塾の講師なのだそうです。
また「いつか訪れてみたい国は?」への回答は、数人がロンドン(って国じゃないけど)を挙げた以外、「どこにも行かない」が一般的でした。
ジーシャン曰く、パキスタンでは女性の旅行および海外旅行はほとんど不可能に近い。なぜなら父親、兄弟、夫の許可が必要で、許可が下りる可能性は極めて低いからだそうです。
一人で市バスに乗ったことも無く、保護者の同伴なしで一般道を歩いたこともない生徒もふつ~にいる国なので、彼女達は海外旅行など想像したことが無く、夢に見るのもムダ、なのだそうです。

この後は、四男カムラーンと長女サディアと三人でバドミントン大会でした。あ~、疲れました~。

では続きは「スカーフの向こう側②」にて。

それではまた、ごきげんよう。

安希

P.S パキスタンの警備員の外見はまさに故フセイン大統領。軍服に帽子に分厚い髭。けれど外見はイカツイ警備員達も、中身は愛嬌たっぷりの普通のおじさん。デレデレっとテレながら、片言の英語で一生懸命話し、握手を求めてきます。コレコレ警備員のおじさんよ、照れてる場合じゃないってば、ちゃんと見張ってなくちゃだめじゃない!

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