46.問題無いわけない②(バクスー)
標高2000メートルで療養中。インド山奥で気づく問題は、インドばかりではなくて…。

皆さん、どうもこんにちは。
デリーでの引きこもり生活を中止して、インド北部のヒマラヤ山系にて山ごもり生活に切り替えました。
そんなわけで、安希@標高2000メートル超、山肌に雪の残る小さな村バクスーから、「問題無いわけない」の後半をレポートです。

■社会構造

インドの社会構造の中で宗教とカースト制度が重点を占めていることは前回のレポートで書きました。
つまりインドは階級社会なのです。これは単なる格差社会とは少し違って、社会構造として認識された「階級」が存在する社会なのだと思います。
総人口の約3分の1が一日1ドル以下の生活をしている中で、インドには61000を超える(数年前のデータ)ミリオナー(億万長者?)が存在するらしい。
そして、高所得高カーストの階層の人々は、政府よりも断然力があるのだとインド人が話していました。

インドの貧困は世界的に認識されていて、貧困層は巨大で、政府も決して経済的に余裕があるわけではないけれど、国民みんなが貧しいわけでは全然ない。
例えばインドのビジネスマンに聴いた話によると、「インドの5スターホテルに滞在する客の9割近くはインド人。富裕層のインド人はホテルの常連客です。」
また、「上流階級の人々は、政治家よりも力があるので税金は払わないし、法律にも従わない。自分達の私利私欲のために政府を動かすことは彼らにとっては簡単なことだ。」など。
「彼らは、自分達に都合のいいルールをどんどん作って私腹や権力を増強していっている。インドの経済は向上してきているとよく人は言うけれど、金持ちがさらに金持ちになっているだけのことだ。金を持っている人間が社会システム全般を支配するのはインド社会では当然のことなんだよ。」と。

ラッシー屋さんで大成功の男性は、成功はしているけれど、上流階級と成金の彼の間には大きな隔たりがあるのだと話していました。
彼の話では、権力の順位は、上流階級→政府→彼、なのだそうです。
どういうことかと言うと、階級は低いけれど欧米人からの援助でラッキーボーイとなった彼のところへは、警官や役人や宗教団体がしょっちゅうお金を巻き上げに来るらしい。

例えば、警察官が彼のラッシー屋へよくやって来て、法律違反だの何だのと文句をつけて裏金を要求し、彼はそれを断ることが出来ない。
もしも断れば、翌日には警官が店を完全に破壊していくだろうから、要求された額をいつも手渡している、と話していました。
警官にとってもラッシー屋は程よい資金源なので、店が潰れるほどの額を一度に請求したりはしないらしく、この辺りが裏金のバランスなのだとか。
へぇ~。大変ねぇ。

上流階級の場合は逆の関係となり、警官や役人が上流階級からの要求に従わなければ、彼らは職を失ったり、問題に巻き込まれることになるのだそうです。
例えば税金や罰金を請求するとか、上流階級に不利に働く法律を定めるとか、そういうことは出来ないらしい。
へぇ~、大変ねぇ。

また、彼がビジネスに成功して以来問題となっているのが宗教団体との関わりだと話していました。
とにかく、あちらこちらの団体から寄付を要求されるらしく、その額も半端じゃないそうです。
身の安全のために、どうしても支払わなければいけない団体もあって、インドの社会はとにかく複雑。
5年後には引退しお金を持って田舎へ帰るという彼の計画の背景には、こうしたインド社会の階級制度や宗教との距離という問題があるのかもしれませんね。
ちょっと日本なんかとは違っていると思いませんか??

■人口問題とHIV

暇なインド男性がエロ妄想を膨らましている限り、インドの人口は増える一方!というのは笑い事ではないです。
なぜなら、人口問題、仕事不足、不十分な教育制度、と関係して、性職者の増加、HIV感染の拡大という問題があるからです。
インドのHIV感染者数は2005年の報告件数が510万人。この数値は南アフリカに次いで世界第二位らしい。
また約1億人ほどいるといわれるインドの違法未成年就労者の職業の中にも、売春が含まれています。

人口増加→貧困層の拡大→仕事不足→売春増加→HIV感染者増加→医療費増加→国家予算圧迫→教育制度を改善する金なんてない→識字率上がらず→人口さらに増加→…と、
悪循環に陥ってはいかないのかしらと心配してしまいます。
問題に次ぐ問題。この連鎖を断ち切るのは容易な事ではないでしょう。

それからもう一点。インドへセックス旅行やボーイフレンド探しにやってくる先進国の女性達も気をつけるべきですね。
カジュラホ以降、「それ」と判る女性も見かけましたし、「外人と何人寝たか」を本気で競っているインド人男性の集団にも何度か出くわしました。
「俺は恋人になった外人が15人。一夜だけならもっとだ!」とおおいばりの奴等です。
う~ん、現実問題、HIVは世界中にどんどん拡散していくでしょう。
コンドームの普及提供に力を入れている国際機関と言ったらどこなのでしょうか?WHOとかになるのかしら。。。全くにもって、笑い事ではない深刻な事態だと思います。

■社会の発展

インドのこれからの発展に関して。
南部のIT産業などを軸として経済発展はしてくるでしょう。けれども、外資の力による経済発展は、国家経済の基盤の構築または底上げに本当につながるのかしら?という疑問はあります。
ガイドブックにも、南部の20~30代のITラッキボーイは、ラッキボーイ社会という特殊な社会を作り出し、ラッキボーイライフ、つまり独身貴族ライフを謳歌している。と書かれています。
つまり、彼らの飛躍がインド社会全体に与えるインパクトは今のところ小さく、経済的基盤を構築している産業というよりは、「突然出てきた異端産業」のようになっている模様です。
今後、IT関連機器の輸出が増えて、工場が増え、末端の雇用が拡大していけばいいんでしょうけどね。
何もないよりはIT産業があるほうがずっと良いけれど、ITだけではきっと限界があって(何せ巨大人口を抱えた国ですからね)、またIT&外資頼みの経済発展は、コケる時にはパタッとコケてしまうかもしれません。脆いのです。

ここで話が一部矛盾してしまうのですが、発展途上の2大パワー、中国とインドの発展の違いについて少しだけ。
インドはIT産業以外の部分では、発展のスピードが遅い国です。すごく発展してきているとは言っても、中国や東南アジアのスピード発展に比べたら随分のんびり屋さんのように思います。

以前のメール「大学病院におじゃま」の中で少し触れましたが、インドには宗教や伝統文化が深く根付いていて、人々の考え方やら行動のありかた、社会構成や生活に至るまで、宗教文化が浸透しています。
なので、独立だ~、デモクラシーだ~、市場経済だ~、欧米スタイルだ~、と騒いでみたところで、根本のところはあまり変化しない。
つまり、外部スタイルを簡単に移植してきて急速に伸びるタイプの国ではないように思いますね。
ヒンズー教、イスラム教の影響というのはとても大きく、急な発展も無い代わり、急におかしな方向へ向かっていったり、ある日突然総崩れするような国ではないはずです。

その点、宗教色の薄い中国の発展は急激&急速です。日本や韓国もそうですが、粒が揃っていて宗教的信念みたいなものが希薄なので、右向け右で方向転換していきます。
新しいイデオロギーや生活様式が簡単に移植できる土壌がある国が東アジアです。
東南アジアも似ていると思います。
仏教や儒教は、ヒンズーやイスラムに比べて宗教的側面はマイルドで、哲学に近いものがあるので、異なるアイデア(イデオロギーも哲学とよく似たものです。)を受け入れやすいのでしょう。

日本の明治維新以降の歴史や、中国の文化大革命、韓国の急発展、カンボジアのポルポト政権、タイのバンコクなど、東アジアはとにかく極端。
したがって、中国の発展をインドのそれと比較すると、中国は猛烈な勢いで発展を目指し、また発展していく代わりに、ある日突然風向きが変わって、とんでもない方向を向いて走り出したり、総崩れする可能性もあると思います。
内部暴動やクーデターみたいなものは何度か経験するのではないでしょうか?経済危機、ビックリ外交もアリの国だと思います。

インドから東アジアを見てみると、イワシの群れみたいですね。忙しくあっち向いたりこっち向いたり。
その点インドは、海底のワカメや貝やちょうちんアンコウみたいに、バラエティーに富んで意味不明。速く泳げないけど、みんなでごちゃごちゃっとず~っと海底で暮らしてます…、みたいな。
うんうん、何だかインドが愛らしく思えてきましたよぉ~!

■世界は問題だらけ?

山ごもり生活で体調も回復し、久々に穏やかな日々を送っています。朝起きて、山を下り、朝ごはんを食べて山をのぼり、読書と物書きをして山を下り、昼ごはんを食べて。。。という生活です。
山のインド人たちは、とても親切で礼儀正しく、同じインド人とは思えないくらい紳士的で、ますます山の生活が気に入りました。
若い頃はビーチも好きだったけれど、やっぱり歳をとると山ですね。断然、山です!

さて、この静かな山奥。
欧米人、ヒッピーを含め、山に篭る外人も少なくありません。ダライラマ14世が住んでいるというのもあって、欧米人は特に多いです。
ここで気になるのが、「理由アリ」で山に来る人々の存在です。病んでいらっしゃる方、問題を抱えていらっしゃる方、多いです。
旅を始めて以来、そういう方に出会うことはしばしばありましたが、山へ来るとさらに凝縮されて目に付きます。

特に欧米人の男性で、時折目に涙を浮かべながら何時間も延々と話される方、結構いらっしゃいます。
(ご自身で、病んでると認めていらっしゃる方と、そうではないと必死に抵抗されている方、どちらもいます。)
話をじーっと聞いていると、一日が終わってしまうけれど、話を切ろうとすると、彼らの目に涙が。。。。という状況。

男を求めてインドへやってくる女性旅行者の目の中にも、何かしらの苦しみが見て取れることがありますね。(私は精神科医ではないけれど、なんとなく判ります。)
経済力もあり、教養もある彼ら&彼女達が、何かをじっと見つめながら数箱のタバコを空け、ハシシのチューブを口にくわえる姿を見ていると一つの疑問がわいてきます。
彼らと、インドの列車の中で床を磨いていた痩せこけた少年、どっちが死に近いのだろか?と。

世界の放浪者の重要通過点、または拠点としての役割を果たしてきたインド。
インドにいると、まあ、いろんな問題が嫌でも目に映りますね。

インドには素敵なもの、魅力的な文化もたくさ~んあるけれど。。。
問題無いわけない。です。

それではまた。ごきげんよう。

安希

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1件のコメント

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    どうもお久しぶりです・・・って私の事わかるでしょうか?実はつい最近友達と偶然再会して教えて貰いました。偶然とは何処で起きるかわからんものや・・うぬー。実はうちも短大の時、世界のゼミちょっととっていて、タイの子供が売られていくビデオ見せられて、凄い衝撃を受けたことあるよ・・。子供は望まないけれど、親が金の為に売らざるを得ない社会。そしてHIVでろくに愛も知らずに子供が死んでいくのが当たり前のようにあるっていうゼミのビデオやった・・。なんか理不尽なものを感じたことを覚えてるわ。それにしても社会をまたにかけて旅ができるなんて羨ましい限りです。長々とすいません。せっかくやので感想書いてみました。それでは、小手、面!ヤー!と、かつて共に汗を流したちょっと変わり者でへたれな一人でした。

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