44.大学病院におじゃま(ボパール)
インドのお医者さんってこんな感じです。

みなさまこんにちは。安希@インド西側のアハメダバードにたどり着きました。
セクハラの街カジュラホを飛び出し、二日かがりでアハメダバードへやってきたわけですが、その間に列車待ちのためボパールという街に立ち寄りました。
今日は、そのボパールでお医者さんの卵と過ごした一日をレポートしようと思います。どうも。

カジュラホを夕方出発したバスはインド中央部に位置するボパールという街に早朝4時に到着しました。
バスを降り、地図上で500メートル先にある列車の駅に行こうと思ったのですが、外は真っ暗で方角がよく分からない。
数人に駅の方角とトイレの場所を聞いてみたけれど、なんとなく信用できない。しかもバス停周辺には大勢の男がたむろしており、道端でうんこやおしっこをしていたりする。
はい、路上開放トイレと牛と牛の糞はインドの特産物のようなものです。とにかくゆっくりと夜明けを待ちましょう~という気分になれる場所ではないのです。

駅やトイレの場所を教えてあげよう、と言って近づいてきた数人の男をとりあえず無視してうろついていると、もう一人違う男性が「駅に行くのなら僕も行くから一緒に行こう」と誘ってきました。
直感です。彼は怪しい人物ではないと判断。そして、三輪タクシーに便乗して駅まで一緒に行くことに決めました。
(旅をはじめて8ヶ月半、直感で人を見分けられるようになってきました。インドに来てから、出会った瞬間に「マトモ」と分かりすぐに付いて行った男はこれで3人目ですが、3人ともしっかりした親切な人たちでした。その他の雑魚は出会った瞬間から無視です!)

さて、駅の荷物預かり所に荷物を預け、その後は寝袋を広げて寝る予定でしたが、その男性に誘われて、露店でお茶を飲みながら夜明けを待つことになりました。
まだ夜も明けていない道端でチャイを飲んで話し込んでいるうちに、ハッと気が付いた!
睡眠不足のためにボンヤリしていて、あまり深く考えずに話してきたけれど、この男性は医者ではありませんの?
しかも医者と言えば、私は何かを質問しなくてはいけないんじゃなかったかしら?医療レポートをしていたことをすっかり忘れておりました。
しかも、これぞまさに「下痢の相談」をするチャンスなのでございます!おお~。

そこで大慌てで抽象的な質問をしてみました。
「イ、インドの医療ってのはどんなもんですの?」
「クオリティーがとても低いです。」
偶然横を通り過ぎた救急車を指差し、彼は「あの車の中には何もないよ。」と言いました。
「インドの医療の質はどうしてそんなに低いのですか?」
「基本的な医療機器や施設が不十分です。情報も少ないし、研究のレベルも低い。インドはまだまだ貧しい国なので、医療の質を急速に改善していくような力はない。」
「例えば先進国のメディカルスクールへの留学などへのサポート(奨学金など)はあるのかしら。」
「奨学金制度が充実しているとは思えないです。僕もいつか海外で勉強してみたいとは思うけれど、留学というのはお金持ちにだけ与えられるチャンスだと思う。」
「先進国の進んだ医療技術をインドへ持ち込む人がいないと、医療レベルは向上しないでしょうねぇ。」
「先進国、特にイギリスやアメリカの医療からは沢山のことを学んでいるし、医療サポートも受けているけれど、インド医療の全体的なレベルが改善されるにはかなりの時間と医療以外の面での国の整備などが必要だと思う。インドは大きな国で、医療以外にも沢山の問題を抱えているので。」
「ところで、インドには国民健康保険のようなものはあるのかしら?」
「無いに等しいね。保険に入るという概念は無いので、市民は病気になったらその都度全額を負担して医者にかかることになります。富裕層にある一握りの人間で保険に入っている人はいると思うけれど、一般的には保険を掛けないのが普通です。」

「あの~、実はわたくし、下痢ですの。」
「下痢ですか。インドは衛生状態の非常に悪い国です。しかもあなたはトラベラーで、色々な地域を回っている人です。下痢になるのはある意味で当然のことですね。」
「いろいろな地域を回ると下痢になるのですか?」
「それぞれの地域には、異なる環境、食品、そして細菌がいます。あなたの身体は行く先々の場所でそれらの異なる環境に常に順応しなければいけないわけで、それは身体にとってはとても負担のかかることです。それを長く続けていると、疲労が蓄積されて免疫力が低下し、下痢になります。」
「例えばトイレに何度も駆け込むほどの深刻な下痢ではないのですが、正常な排便というものから遠ざかっています。どうすれば良いのでしょう。」
「ORSと水、抗生物質とビタミンBをとることですね。」
「ORSは今も飲んでいます。抗生物質はすでに2回も服用しているので、できれば他の治療法を教えてください。抗生物質を飲むと善玉菌も死んでしまって免疫力がさらに低下して、一度は下痢が治っても、すぐに別の菌が入ってきてやられてしまうのです。」
「抗生物質は何度飲んでも別に問題は無いよ。むしろ悪性の菌を体内に持ち続けるほうが免疫力の低下につながる。抗生物質を飲む際にビタミンBも一緒にとれば、一旦数が減ってしまった善玉菌もすぐに回復してきますから。心配はありません。」

夜が少し明けて来た頃、「下痢のことは僕に任せてください。薬を処方します。そんなことより朝の散歩に出かけて美しい湖でも見ましょう。」と誘われて、早朝の街を歩き始めました。
ボパールにはとても大きい湖があるのです。予想以上に景観の良い街でビックリ。
湖のほとりでしばらく話し込んだあと、すぐ近くにある大学病院へ行き、男子寮に住んでいる彼の友人にバイクを借りて市内観光をすることになりました。

というわけで、インドの医療大学(大学病院)の男子寮におじゃまです!
学科での勉強を終えて、研修過程に入る前のセミライセンスの勉強中という医師の卵さん二人にお会いしました。
二人とも、と~っても親切で話の面白い人たちで、3時間近くも話し込んでしまいました!
特に素晴らしかったのが、彼らが医者になろうと思った理由、「お給料が多くもらえる安定した職業だからに決まってるじゃないか!!」
おお~、なんと正直な若者達でしょう。説得力とは素直さから生まれるのですね。
仮に「人類を救済したいから。」なんて真顔で言われていたらせっかくのお喋り大会がシラけるところでした。

主なトピックは、中東の歴史と現在の国際問題、インドの外交、インド経済、人口増加、宗教紛争、そして下痢。
2050年には中国についでインド経済が世界第二位になるという予測。けれども、インドの人口増加は国力や経済の発展を助ける以上に社会問題を生み出す可能性があること。
インドおよび中東の関係には、現在もなお冷戦(ロシア&アメリカ)の影響が根強く残っており、混乱の中心には「アメリカ、デモクラシー、イスラム過激派」が常に絡んでいること。など。
特に、クリントン政権を挟んでブッシュ親子(オイルマネー)がアメリカの政治に絡んできたことが、冷戦から続く緊張を今なお中東全域に強く残してしまっている原因である。などなど。

そして、やはり印象的だったのが、インド以西は宗教が国政の軸になっているという点ですね。
これは、東アジアとの大きな違いだと思います。
イデオロギーは風向き次第で変化しますが、宗教には伝統がありとても根が深いので、国民生活に宗教が深く浸透している点で、インド以西では、東アジアや西欧やアメリカと同じようなデモクラシーや産業発展は起こらない可能性が高いと思います。その代わり、風向き次第で国家の方針が急変するという可能性は低いはずです。

うんうん、この辺りのトピックはと~っても興味深かったのですが、全部書くのは無理なので、また今後のレポートでカバーしたいと思います。

ところで下痢については、みなさん医学書やら分厚い薬の本を開いて、それは熱心に説明してくださいました。
私のケースは、環境の変化と疲労のために、善玉菌の機能が弱りビタミンBの生成がおろそかになり、免疫力が低下して外部からの菌にやられてしまっている。
そのため、外部菌を抗生物質で退治するとともに、ビタミンBを摂取し、さらに免疫力(体力)向上のためにたんぱく質をしっかりと摂る。
という訳で、もっと肉を一杯食べて、元気になって、免疫力を回復させればよいわけですね。

インドの先生の治療方法は:
まず、バイクに乗って元気に遊びまわる。そして清潔なレストランで、羊肉をガッツリ食べて元気を付け、さらにジョッキ2杯のビールで体内消毒&消化を助け、細胞にアルコールを与えて元気付ける。
それから静かな午後の男子寮を借り切って爆睡。夜行バスの疲労が抜けて気分もすっきり。最期は駅まで送り届けてもらいました。
それで何がよくなったかと言えば、多少気分がよくなった程度です。インドのお医者さんよ、あなたの処方で本当に間違いない??

大学病院におじゃまして驚いたのは、病院の敷地内に暮らす決して少なくはないホームレスの存在です。ボロ衣の老人や子供が病院の建物の周りにビニールで小屋を作り、やつれた女性達が薪をくべてクッキングをしていたりするのです。なんじゃこれは?
しかも、これもインドらしいことですが、病院の先生か生徒らしき人も、病院の建物の壁に向かっておしっこをしていたりする。
(路上の排尿、排便はインドの大問題だと思います。例えば駅周辺の壁は白い結晶(塩分?アンモニア?)で覆われ、その周りは緑色に濁った水たまりが常に出来ている。)
そして、男子寮の部屋まで朝ごはんを運んできてくれたのは嬉しかったけれど、手を洗うような場所がどこにもない。
屋上まで行ってペットボトルの水で手を洗って食事をしたら、お医者さん達は驚いていました。

それからもう一つ、ITを使った遠隔医療の導入という点に関して。
現在のインド経済向上を支える一大要素がインドのIT産業であることは疑いようもありません。とくに南部のバンガロール辺りに行けば、IT産業の発展著しく、IT長者も多数いると思います。

そこでこの広いインドにITを使った遠隔医療を導入し、「低コストで質の高い医療」を目指してはどうか、という話ですが、現実はまだまだ厳しいでしょうね。
というのも、インドのお医者さんたちはE-メールアドレスすら持っておらず、パソコンはほとんど使ったことがないらしい。ビックリしました。
ハイテク医療を考える前に、まずは病院内に機能的なトイレを作り、市内の衛生環境を整えることが第一だと思います。
健康保険という概念がなく、大学病院内にホームレスが一杯住んでいるような国ですからねぇ。

というわけで、今回は大学病院体験記でした。

ところでこの体験で一番良く分かったこと。それは結局のところインド人の「好奇心と暇さ」ですね。
宗教的、文化的にいろいろと制限のある社会で生きる彼らは、たとえお医者さんと言えどもちょっと退屈?なのかもしれません。
お昼を食べたレストランの客は全員が男一人か男性のグループで、店内の女客はおばちゃんの私一人。
一緒に行ったお医者さんは「女性とレストランで食事をし、ビールを飲むなんてインド社会では考えられないことだ!女性とビールを飲んだのも、レストランで一緒にランチを食べたのも今日が初めて!」とおお張り切りでした。
朝4時から夕方7時に列車が出るまで、ず~っと一緒だった先生よ、あなたも相当のヒマ人ねぇ~。他にすることはないのかしら。。。

インド経済が2050年までには世界第二位になっているという予測。
勤勉大国から来た私の意見は「ただ人口が増えれば経済力も増すってわけじゃないのよぉ。もっと働かないと。。。」といったところです。
いかにも日本人らしい意見でしょ?

それではまた、ごきげんよう。

安希

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