245. パンドラの箱が開くとき 
~どさくさに紛れて、北方領土も返還か?~

皆さま、こんにちは。
今日もまた、キューバレポではなく、ウクライナの話です。とくにニュースを追っているわけでもないのですが、ウクライナの友人からメールがきて、いろいろ面白いなぁ、と思ったので書いておきますね。

メールの内容は:
日本が千島列島の併合を検討しているって聞いたけど、これ本当?

いきなり何ですかい?(笑)どういう立場で質問してきているのかが分からなかったので、一瞬答えに躊躇しました。領土問題、歴史問題というのは、国内で話している分には「好き勝手に」言っていられますが、国際社会ではそうはいきません。国籍や民族背景、宗教、政治スタンスだけでなく、個人的な感情や家族の歴史まで、その人の置かれた立場によって、物の見方というのはまったく違ってきます。ですから相手の立場を想像しながら対応する必要があります。

そこでまず考えたのは、彼女の国籍。彼女はロシア人ですから、北方領土を軸にすると、一応敵国ってことになります。でも、彼女はウクライナ生まれのウクライナ育ちで「ウクライナの独立と統一を願っている派」ということは、たぶん「クリミア半島がロシアの手に渡ることを嫌っている」立場だろうな、と。
それで・・・、ここで北方領土の話が出てくるって、何が聞きたいんだろう。

仕方がないので、個人の意見ではなく、あくまでも日本の一般的なスタンスとして次の内容を説明しました。

日本には、第二次世界大戦の最後の最後、日本が降伏する寸前になって、ロシアに不当に占領された、という思いがあること。できれば四島、あるいは半分の二島の返還を求めて交渉が続いていること(断続的に)。そして今回のクリミア危機については、日本としてはG7の一員として「軍事介入に反対」はしているけれど、ロシアとの関係は悪化させたくないこと。いつもの通り、日本としては嵐が去るのを静かに待って、プーチンを怒らせることもなく、できれば四島還して欲しいな〜、って思ってるんじゃないですかね。
と返事をしました。

彼女は興味津々でした。それで一つ分かったこと。ロシア人にとって、北方領土というのは「忘れ去られた領土問題」だということ。彼女が突然質問してきた理由は、「日本との間に領土問題が存在しているということを知らなかったから」です。なぜ知らなかったかと言うと、「ロシアはあまりにも多くの隣国、国内外の自治区との間に領土問題を抱えているから」だから「極東の島の話なんて、へえ〜、そんなのあったんだ〜」程度にしか認知していない。今回のクリミア問題が出てくるまでは、たぶん「考えたことすらなかった」のだと思います。それで突然訊いてきたんですね。

そして、この「クリミア危機」というタイミングで、彼女が「北方領土」に興味を示してきた理由は、北方領土を守りたいからではなく、むしろその逆。
クリミア問題で、ロシア近辺の領土問題に一斉に火がつく可能性がでてきて、そうなれば、ロシアよ、ざまーみろ」だからです。

彼女のメール:
思うに、ロシアの政治家たちは、ことを急ぎすぎて、パンドラの箱を開けてしまったようね
「パンドラの箱?!と言いますと?」
『クリミアを手に入れるために、ロシアは「併合法」という法案を急遽作りました。自治区(クリミア)内の住民投票で「統治政府(ウクライナ)からの離脱と、ロシア連邦への併合」が求められた場合は、統治政府(ウクライナ)の意思に関係なく、それが可能になる、という法案。』
『そんな勝手な話、ないでしょ』

でも、それってロシアの法律であって、ウクライナの法律じゃないでしょ?と思いたいところですが、クリミアは自治共和国なんですよね。クリミア独自の憲法を持つ、自治共和国です。そこにはロシア系の住民が200万人ほどいて、ロシアの海軍基地があり、15000人以上の軍隊が送り込まれ、この混乱のどさくさに紛れて、先日『クリミアの首相』になった人物は、え〜っとロシア市民・・・らしいです。ロシア側は、押せ押せの状況になっているわけです。

では、これは悲観すべきことなのか? 第三者的には、そんなにロシアの一部になりたいなら、ならしてあげれば?とも思いますし、いや、クリミアには他の少数民族(タタールなど)もいるから、ウクライナ内のあの半島だけロシアにするなんていうのは、やはり非現実的で、新たな民族紛争の火種になるだけだ・・・と思ったり。

ところがメールをくれた彼女は、この法案によって『パンドラの箱が開く』と言うんですよね。何が起きるかというと、今度は逆に、ロシア連邦が抱えている多くの『自治区』『共和国』が、住民投票を経て一斉にロシアから独立する、と。

つまり、
この法案は、ブーメランのようなものだから』と。

『ウクライナがクリミアを失うのと引き換えに、ロシアは多くの自治区を失うかもしれない。ロシア連邦から独立したい自治区はたくさんある。極東ロシア(ハバロフスクのある辺り)は中国のものになるでしょう。カリングラード(リトアニアの横にあるロシア連邦の州)は、ドイツかポーランドのものになり、スモレンスク州はベラルーシへ、カレリア共和国はエストニアかフィンランドに併合される可能性が出てくる。

そしてもちろん、少数民族の80%が集中しているカフカス地区の共和国にも、独自判断する権利を与えなければいけなくなるでしょう。さらに、天然資源と強力な勢力を誇る、タタールスタン共和国(ロシアのイスラム世界。豚の取材で行きました。)、ヤクーチャ(サハ)共和国(シベリア、地下資源の宝庫!)、カルムイク共和国(オイラト族が住んでます)、バジコルトスタン共和国(オイル出てます)。これらの共和国が、ロシア連邦から脱退したら大変なことになるから。

そんなわけで、千島列島もロシアから独立し、無事に日本がゲット。四つとも全部還ってくるよ。よかったね〜。^^

あ〜なるほど、そういうことか〜。でもおばちゃんは言いました。

『^^; だけど、北方領土の住民が、住民投票で日本への併合(帰属)を求めるとは思えないけどね。住んでる人って、日本との繋がりがないから』
『そんなの関係ないよ。ロシア人でも、日本の一部でいたいかもしれないじゃない』
『確かにね、日本のパスポートのほうが、使い勝手いいしね』

インフラ整備力もロシアより日本のほうが上だし、そうか〜、「日本っていいよ〜」って住民を誘惑するという手があるのか、な〜んて、もちろん非現実的な話ですが、ちょっぴり妄想してしまったのでした。まあ、還ってきたからって、私が喜ぶわけでも何でもないんですけどね。自分の島じゃないですし、住む予定もないし。島を還してもらうより、うちのアパートがあと2畳広くなるほうがずっと嬉しい。

彼女と話していて、つくづく「ロシアって、大国だけど寄せ集めだよな〜」と思いました。ソ連が崩壊し、巨大連邦から周辺国が独立していった結果として現在の(縮小された)ロシア連邦があります。でも、ロシア連邦も、チェチェンや北オセチア(カフカス)をはじめとする、たくさんの分裂危機を抱えながら、あの巨大な国土をかろうじて維持しているんですよね。そういう意味では中国も似ていますよね。内部分裂ギリギリでやっている(っていうか押さえ込んでいる)わけですから。第三者から見ると、面倒なことやってないで、それぞれの自治区が自由に独立すればいいのに・・・と思うところですが、独立したらしたで、今度はまた新たな権力闘争が起きて内部分裂したりするんですよね。人間って難しい。そして、どういうわけかまた『民族がいるところに、天然資源がある』んですよね。(笑)だから手放せない。

ただし、
手放したくなかったら、人のものも取るな!

クリミア危機を抱えるウクライナで、彼女が一番言いたかったことは、たぶんそこなんでしょう。パンドラの箱、一度開けると収集つかなくなりますよーってね。だた、さすがにプーチンも、そこのところは慎重に、と思っているようです。

以上、ザ・領土問題でした。
次こそはキューバの話を書きます。(もう、忘れちゃってるよね)

ではまた、ごきげんよう。
安希

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3件のコメント

  1. そう、領土問題は、パンドラの箱なんですよね。どこかの阿保総理にも読ませたい。嫌われ者プーチンのお友達?開けてどうするか、わかっているのでしょうか?

  2. 横やりすみません。
    「統治政府からの離脱」+「ロシア連邦への併合」
    この二つが1セットであったとき、はじめて併合法が効力を発揮すると読み取れましたが、どうなんでしょうか?
    自治区の住民が住民投票さえすれば統治政府から離脱できる、すなわちロシアから独立を勝ち取れる、そんな甘い話だとは思えません。
    あくまでもロシア連邦併合を望んでいる自治区にだけ通用する法律だと解釈しましたが、間違ってますか?
    さらにロシア側の併合法が国際法に遵守しているのかどうかが問われているような気がします。

    1. もちろん、その通りです。ロシアが、国内の自治区の独立など認めるはずがありません。それは、どの国も同じです(ウクライナだってそうです)。ポイントは、ロシアが「他国の自治区は、いつでもロシアの一部になれる」ことを宣言しておきながら、その逆を許さない、というような身勝手が通用するかどうか、という話です。「クリミアの独立・併合を認めるべきだ!」と、ロシアが声高に叫べば、カフカスの人だって当然「じゃあ、自分たち同じようにしたい」と言い出すでしょう。そういう意味で、自ら「火種」を作っていると言えるのではないでしょうか?

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