203.北朝鮮に行ってきました。車中編1 
(新義州~平壌)

皆さま、こんばんは。

長かった準備編も終わり、やっと北朝鮮国内の話を始められそうです。まずは往復の列車の中で見たこと、体験したこと、感じたことを、ランダムに書いていきます。


■ 長~い入国審査(手荷物検査)

丹東の駅を10時に経った列車は、橋を渡って対岸の北朝鮮へ。4人用コンパートメントには、私の他に3人の北朝鮮男性が乗っていました。彼らは、北京から夜行で乗ってきていて、ちょうど朝ごはんを食べ始めたところでした。一人は、新義州の若い男性(ビジネスマンだと思う)。あとの中年の男性二人は、平壌に住む(たぶん)ビジネスマンです。「たぶん」と書いた理由は、北京で何をしていたのかを訊ねた時に、「ビジネス?」と訊いた瞬間に、視線を逸らして曖昧な返事をしたから。私も、それ以上は追求しませんでした。

対岸に着くとすぐ列車は新義州駅で停車し、入国審査官(手荷物検査の軍人?など)がぞくぞくと乗り込んできます。朝鮮の人たちは、中国から持ち帰る大量の荷物を「これでもか!」というくらい抱えていますから、審査官は各コンパートメントに乗り込んで徹底的に調べるわけです。一人ずつ順番に。約4時間の足止めでした。

■ 携帯電話とGPSを徹底検査

我々のコンパートメントは、制服を着た女性の審査官(検査官)が取り調べました。まずはビジネスマン二人組から。二人は、巨大なスーツケース級の荷物をそれぞれ5個ずつ(二人で10個!)持っていました。荷物はどれもそうですが、透明のビニールテープでぐるぐる巻きにしてあるんですね。袋が破れないように補強しているんだと思いますが、どの人もビニールテープで固めていました。そんな荷物も、検査の時には、全部開けなければいけません。もう、徹底的に。どの人も、一世一代のチャンスと言わんばかりに、家電製品やちょっとした小物はもちろん、乾麺やらトイレットペーパーに至るまで、とにかく山ほど買い込んでいました。

二人組の審査が終わり、次はおばちゃんの番。言われた通りにバックパックを開いて審査官に見てもらいました。
「はいどうぞ~、好きなだけ見てくださいね~」
「携帯電話はどこですか?」
「もっていません」
検査員は、バックパックの底までしっかりとチェック。
「はいどうぞ~、バッグの底の底までちゃ~んと見てくださいね~。こっちのポケットもね~」
バックパックの中には、4日間の旅に必要な最小限のモノしか入れていませんでしたが、バックパックの底の方には、汚れた靴下や下着をそのまま詰めておいたので、それらが出てくると、お姉さんも検査をあきらめたようでした。あれれ~、もっとしっかり見なくていいのですか~?ほら、しっかり臭いも嗅いでもらって~、頬ずりしてもらってもいいんだけどな~。(笑)ポケットには、一つだけ生理用品が入っていましたが、女性の検査官はそれを引っ張り出すと、一瞬ポカンとして、すぐにポッケに戻しました。はいコレ、ジャパニーズパッドね。吸収がいいっすよ~。何なら差し上げますよ~。羽根つきじゃないけど・・・。(笑)(とっても気前のよろしい今日のおばちゃん、只今入国審査にいそしみ中)

そして、カメラや貴重品の入った小さいほうのバックパックも検査開始。税関申告書類に書いた通り、2台のカメラを取り出してカバーを外して提示。一眼レフは、サッと見ただけで終了。意外と長かったのが、サブのデジカメでした。リコーのGR3です。審査官は訊ねました。
「GPS?」
「違います。カメラです」
「GPS機能がついているカメラか?」
まあ!そんなカメラがあるんですの?
「違います。ただのカメラです」(笑)
彼女は電源を入れて、機能ボタンを押し始めた・・・が、どんどんややこしくなっていく画面(日本語の設定画面)に混乱し、審査終了。
お疲れ様でした。

最後は、これまた大きなスーツケースを抱えた若い男性の荷物チェックが延々と続き・・。一番問題となったのが、なんと「地図」でした。

■ 位置が判明すると、何かまずいことでも?

若い男性が所有していた、スケジュール帳?のようなファイルから出てきた地図。B5くらいの地図で、朝鮮半島の地図と世界地図がありましたが、検査員はそれを取り上げると、ずいぶん長い時間、その地図を凝視していました。お姉さん、えらく興味深々ですなぁ・・・。海外の情報が極めて入ってこないという北朝鮮国内で、〝中国で販売されている″世界地図を見るのって、秘密文書を見てしまった時のような興奮があるのかしら?それとも、国内に持ち込むにあたって、何か都合の悪い情報(国際的な地理に関する情報?)が入っていたのだろうか?とにかく世界地図をじ~~~~っと見つめてましたね。

さらに、朝鮮半島の地図も凝視。何が見たかったんだろう・・・。中国や韓国との国境付近のこと?北朝鮮国内のこと?韓国の地名?何がそんなに気になってたんだろう・・・。

ただ、GPSにせよ、地図にせよ、地理に関するもの、位置が判明するようなものを徹底排除(徹底チェック)しているのは、なぜでしょうか? たぶん軍の施設など、位置を特定されると困るような場所が関連しているのでしょうけれど、それがGPSや地図の持ち込みとどう関係しているのかが、いまいちよく分からない。とりあえず、我々外部の人間は、世界地図はもちろんグーグルマップの航空写真で北朝鮮中の地理も、街も建物も道路も、すべてのディテールを完全にチェックすることが可能です。衛星写真からは、金日成、金正日の銅像だってバッチリ見えるし、滞在先のホテルの前に停まっている車やバスの詳細まで見えてしまう時代に、私がGPSを持って入国したからって、何か新たに発見できることってあるんでしょうか・・・?GPSの電波妨害くらいなら「ああ、外部の人に位置を特定されるのが嫌ないんだな」って分かる気もしますが、GPS機能がついた機器を私が持ち込んでみたところで、その活用法ってあるんでしょうか?

あるいは、国内の人の手にそういう地理的情報が渡ることを怖れているのでしょうか?脱北予備軍や闇商人、クーデター画策者だったら活用法があるかもしれない?私にはよく分かりません。

あっ、それかGPS機能がついたカメラ(たとえばリコーGR3とか!笑)が、正恩さんのお車にピタッとくっつけられると、行動が特定されて危ないから、とか?(笑) でもそのためには、私が正恩さんのお車に、タタターッと走って行って、車体の裏面に粘着テープでリコーGR3をピタッとくっつけなくてはいけないわけで、そんなミッションはインポッシブル!それで、え~っと、正恩さん、どこにいらっしゃいますの???

北朝鮮がGPSと地図を警戒する理由、知っている人がいたら教えてください。

■ 怖れていたような検査ではなかった

徹底した検査はありましたが、思っていたほども厳重ではありませんでした。国際比較で言えば、越境列車としては詳しく調べる方ですが、国際空港も含めれば、もっと徹底して調べる国もあります。平壌到着後に現地ガイドと話したことの一つに、昨年北朝鮮で行われたサッカーワールドカップ予選時の空港での取り調べの件がありました。日本のネット上の書き込みや報道では、日本からの応援団が長時間にわたり取り調べを受けたことや、選手団が嫌がらせととれるほどの徹底した検査と拘束を受けて、試合前にすっかり疲れ果てたとありました。

実際の状況を訊ねると、ガイドは正直に言いました。
「長時間拘束して、徹底した検査で嫌がらせをしました」と。なぜなら、「北朝鮮選手団が日本で試合をしたときに、ズボンの中まで徹底して取り調べるという屈辱を受けたので、やりかえしました」と。

もちろん、両サイドの選手や応援団にとっては、迷惑極まりない話ですが、おそらく彼の言っていることは本当だろうと思いましたね。取り調べが厳しいのは北朝鮮だけではないと思います。というのも以前、欧米の友達に、「ドイツやアメリカで、嫌がらせかと思うほど取り調べられたことがあってうんざりした。その点、日本の税関やイミグレーションは礼儀正しくてスムーズだ」と話したところ、彼らはこう反論しました。
「日本の税関の取り調べも、僕ら外人にとってはむちゃくちゃ厳しかったよ」と。

たぶん、そういうことなんだと思います。サッカーの時も、日本のイミグレーションや税関は、相手が北朝鮮から来ているというので、いつも以上にやり過ぎた可能性があり、また北朝鮮側もやり返したのだろう、と。そして本件の場合は、問題の発生地が何かと噂の北朝鮮だったのも相まって、「やっぱりあの国は常識はずれだ」と、騒ぎすぎたのではないでしょうか?

ちなみに、世界で一番うんざりするイミグレーションは、イスラエルの国際空港です。常軌を逸しています。

■ 思っていたほども厳格ではない?

往路で4時間の審査(検査)待ちの間と、復路の出国手続き(3時間くらいかな?)の間、窓の外の様子をずっと見ていました。鉄道の職員や軍人など、色の違う制服を着た人たちをたくさん見かけました。時間がくると軍服姿の女性たちが駅のホームに整列して、号令に合わせて掛け声と所作を繰り返す姿などは、さすがに北朝鮮くらいでしかお目にかかれないだろうな、とは思いました。ただ、掛け声が終わると、結構みんなダラダラしていて、テレビで見るマスゲームや軍の行進のような一糸乱れぬキビキビした行動ではありませんでした。号令していた隊長も、他の人たちも、寒そうにコートの襟に首をひっこめ、仲間同士腕組みをしながら、ぞろぞろとゲートの向こうに消えていきました。ふつーでした。友達同士の普通の関係。普通の昼時。普通の女性たちが、寒いと感じ、それを表情やしぐさに出す。そして、これから昼食か休憩かは知りませんが、なんだかちょっと嬉しそうに腕組みをして、ダラダラと歩いていく姿。テレビの中で見ていた、無表情でロボットみたいな人たちとは全然違うな・・・と思いながら、彼女たちの後姿を眺めていました。

それから、プラットフォームで待機している駅の係員数名(または軍人)も、何かをぼんやり考えながら、あっちいったりこっちいったり、ず~っとぶらぶらしていて、暇なんでしょうけれど、ほんと、「暇です~~~」という雰囲気で、まったくキビキビしていなかった。ああ、普通だな・・・と。

さらに、軍服を着た若者がやってきて、うろうろしているな~と思っていたら、ホームの反対側に停車してあった貨物列車のワゴンの隙間に向かって、あっ~~~、おしっこしてる!!のを、おばちゃんは窓から発見。まるで、ずっと我慢していたワンちゃんのよう。それが終わると、お兄さんはワゴンの上にかぶせられていた網の紐の結び目を1カ所だけほどき、ワゴンによじ登りはじめたよ~。そして、シートの下の山から・・・、あっ、何かを盗みました!かっ、懐中電灯です!!(安希の実況生中継)しかも2つです!2つ盗みました!軍人のお兄さん、ワゴンからピョンと飛び降りました。そして近くにいたもう一人の軍人さんに、一つお裾分け。いや、二人は共犯です。そして何食わぬ顔で、去っていきます。逃げる様子もありません。ゆるいです。ゆるい雰囲気です!(笑)

■ イミグレーション(税関)らしい駆け引き

北朝鮮の税関ということで、入国時には緊張もしましたし、警戒もしていました。ただ、時間の経過とともに、強い警戒心はなくなっていきました。落ち着いて回りを見渡してみると、北朝鮮の税関や入国審査も、どこにでもある風景のように思えてきました。国境を行き交う人々というのは、いろいろ持ち込みたいし、ちょっと隠しておきたいものもある。そう言う部分も、他の国境と何ら変わらないという印象でした。検査官に対しても、みんなが怖れおののいたり、異常に媚びたり、ワイロを渡すような光景もなかったです。しかもあれだけの量の荷物があれば、全部の物品をチェックするのは無理なので、いろいろ細工されて持ち込まれるものもあるだろうし。検査官も、冷徹な感じではなく、税関なんかによくいそうな、普通に無愛想なお姉さんでした。

帰りの列車では、朝鮮族だけど中国籍のおじさんと一緒でしたが、彼なんかは明らかに隠してましたね。(笑)あまり詳しく書いて、秘密の隠し場所が重点チェックポイントになってしまうと、これからも隠したい人たちが可哀そうだから、やめておきます。(笑)でも、おじさん、うまいことやってたな~。
「私はイルボン(日本人)だよー。はやく無事中国に帰りたいねー」っておじさんに伝えてあったので、むこうも気を許していた可能性はあります。私なら密告もないですからね。ブツの隠し場所も教えてくれて、ニヤっとしてました。こっちもニヤッと。そして検査の間は、しらを切る我々。(笑)いや~、おじさん上手いこと隠しましたね~。私まで嬉しくなったのでした。

そんなことで、警戒していた割には、案外普通の国境越えでした。それにしても、おじさんが隠さなければいけなかったブツには、どんな隠し事があるんだろう・・。何ともミステリアスでワクワクしちゃいましたよ。

出国審査は、若い軍人さんが乗り込んできて、英語で質問。北朝鮮サイドは、みなさん、カタコトの英語がおできになる方が多くて(そういう要員が配置されているから当然ですが)、中国を旅行するよりも楽チンでした。
「ナカムラ、アキ?」
「はい」
「ジャパン?」
「はい」
「ウェイター?」(Waiter と Writer は紛らわしい)
「ライターです」
「ノベリスト?」
「はい(流れで、小説家になってみた)」
「・・・」
「・・・」
「夫は?」
おおきなお世話じゃ。
「なぜ、結婚しなかった?」
いきなり過去形になってるし。
改めて、おおきなお世話じゃ、若き軍人君よ!(笑)

君!そこをどきたまえ。わしゃ出国する。さらばじゃ。

列車の中の話だけでも、まだまだあります。続きは車中編2にて。
ではまた、ごきげんよ~。

安希

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1件のコメント

  1. あー面白かった!!7時間の拘束は驚きました。続きを楽しみにしていまーす

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